アジア

2025.12.23 13:00

フォーブスが選ぶ「アジアの慈善活動家」2025年版、教育分野への寄付がトレンドに

Drazen Zigic/Shutterstock.com

ロビン・クーダ(オーストラリア)

エアトランク創業者兼CEO○年齢:46歳

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2024年12月、シドニー拠点のデータセンター運営会社AirTrunk(エアトランク)を、米投資ファンド大手ブラックストーンとカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)に240億豪ドル(約2.5兆円)で売却してから2カ月後、創業者兼CEOのロビン・クーダは、自身のクーダ・ファミリー財団を通じて、シドニー大学に1億豪ドル(約104億円)を寄付した。同大学史上最大規模となるこの寄付は、女子学生を対象とする20年間のSTEMプログラムに充てられる。同プログラムには、高校段階での給付金の提供や、大学学部課程での奨学金支給が含まれる。

バングラデシュ生まれのクーダは2020年、男性が多数を占めるテクノロジー業界における男女平等の実現を目的に、妻のメリア・ウォーカー=クーダとともに同財団を設立した。クーダはプレスリリースで、STEM分野における多様性の重要性を訴えることで、「長期的に前向きな社会的影響を生み出したい」と述べている。また後に、このプログラムは「才能はどこにでもあるが、機会はそうではない」という強い信念から着想を得たものだと語った。

ロバート・ウン(香港)

ウン・テンフォン慈善財団共同創設者兼取締役○年齢:73歳

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ダリル・ウン(香港)

サイノグループ会長、ウン・テンフォン慈善財団取締役○年齢:47歳

ビリオネアのロバート・ウンと息子のダリルは3月、家族が運営するNg Teng Fong Charitable Foundation(ウン・テンフォン慈善財団)およびSino Group(サイノ・グループ)を通じて、香港におけるAI開発を支援するため、2億香港ドル(約40億円。1香港ドル=20円換算)を寄付した。この資金は、香港政府が進める研究促進プログラム「InnoHK」の下で運営される香港生成AI研究開発センター(HKGAI)の支援に充てられる。

香港科技大学が主導する教育・研究機関と連携するHKGAIは、すでに香港で開発された大規模言語モデル「HKGAI V1」を公開した。次の段階として、広東語、英語、中国語(普通話)に対応するAIチャットボット「HKChat」の開発を進めている。

ロバート・ウンと弟でシンガポール拠点の不動産大手ファー・イースト・オーガニゼーションのCEOを務めるフィリップ・ウンは2010年、故父をしのんでウン・テンフォン慈善財団を設立した。この財団は、香港、中国本土、シンガポールにおける教育、医療、芸術・文化を支援対象としている。10月には、北京の天壇公園にある3000本超の古樹の保全を支援するため、2000万元(約4億4000万円)を寄付した。またダリルは8月、父の引退を受けて、香港拠点のSino Groupの会長に就任した。

アーチー・ホアン(台湾)

ハーメス・エピテック創業者兼会長○年齢:73歳

アーチー・ホアンは2024年10月、母校である国立陽明交通大学に対し、12億台湾ドル(約60億円。1台湾ドル=5円換算)相当の医療機器を寄付した。これら医療機器は、中性子ビームを用いてがん細胞を死滅させつつ、正常な組織への影響を抑える放射線治療の一種である加速器ベースのホウ素中性子捕捉療法(AB-BNCT)に使用される。

非上場のハーメス・エピテックの上場子会社であるHeron Neutron Medical(ヘロン・ニュートロン・メディカル)が開発したこれら医療機器は、国立陽明交通大学の教育・臨床パートナーである台北栄民総医院に新設されるBNCT施設に設置される予定だ。

同病院は2010年以降、600人以上の患者にBNCTを用いた治療を実施しており、新たな設備の導入によって、多くの患者を治療できるようになるとしている。建設工事は8月に着工済みで、新センターは2027年の開設が予定されている。ホアンは、半導体製造に使われる光電子デバイスの開発によって、約20億ドル(約3120億円)の資産を築いた。その資産の大部分は、1977年に創業した半導体検査装置メーカーHMI(旧Hermes Microvision)を2016年、オランダの半導体製造装置大手ASMLに31億ドル(約4836億円)で売却したことによるものだ。

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翻訳=上田裕資

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