東松寛文氏。平日は広告代理店で働くかたわら、週末には世界中を旅する「リーマントラベラー」だ。これまでに102カ国247都市に渡航、2016年、3カ月間で世界一周を達成し、『地球の歩き方』から旅のプロに選ばれた。
『リーマントラベラー 週末だけで世界一周』(河出文庫)
『リーマントラベラー 週末だけで世界一周』(河出文庫)などの著書があり、オーストラリア、ケアンズ&グレートバリアリーフ観光大使でもある、文字通り「週末海外旅行の猛者」東松氏に、旅の極意、次の旅に速攻役立つトリビア的な教養知識を伝授していただく。
本稿はその3回目。人気記事:航空券「SSSS」の印字はFBIの注意喚起暗号? 一般人も例外にあらず に続き、電波が不安定な旅先で「ここはどこ?」にならないための「旅のお守り」についてアドバイスする。
海外旅行や出張に行くとき、いまやスマートフォンは欠かせない存在です。地図、翻訳、連絡、情報収集……かつて紙の地図やガイドブックが担っていた役割の多くを、いまはスマホが引き受けています。
特にGoogleマップ、LINE、各種SNS、そして最近ではChatGPTなどの生成AI。
「これさえあれば、海外でも日本と同じように動ける」。
そう感じている方も多いのではないでしょうか。実際、主要都市の中心部であれば、その感覚はかなりの確率で当たっています。
ただ、僕自身が100カ国以上を旅してきて、そしてここ数年で強く感じているのは、「その前提が通用しない瞬間が、突然訪れることが増えている」ということです。
“いつものアプリ”が突然使えなくなる瞬間
僕にとって、その象徴的な体験が、2025年11月の香港でした。
事前にChatGPTで旅の行程を組み、現地では必要に応じて微調整しながら動く。最近の僕にとっては、ごく当たり前の旅のスタイルです。ところが、香港に到着後、日本の通信会社の海外ローミング回線でChatGPTを使おうとしたところ、なぜか画面が読み込まれません。
「事前に調べた限りでは、ChatGPTは香港なら問題ないはず」
「しかも、日本の回線をそのまま使っているのだから大丈夫だろう」
そう思いながら何度か試しましたが、状況は変わりませんでした。設定ミスでも、不具合でもありません。“そういう状態だった”という表現が、いちばんしっくりきます。その後、ためしにGeminiも起動してみましたが、同じ状態で使えませんでした。
あとから調べてみると、はっきりとした原因は特定できなかったものの、いくつか考えられそうな背景は見えてきました。海外で使う通信回線は、状況によって接続のされ方が変わることがあり、日本の回線を使っているつもりでも、サービス側からは必ずしも「日本からのアクセス」として認識されないことがあるようです。
また、最近はChatGPTのようなサービス側でも、利用できる地域や回線の判定が以前より厳しくなっており、場所やタイミングによってはアクセスできないケースも増えているとのことでした。加えて、香港の通信環境自体も年々変化しており、以前は問題なく使えていたものが、同じようには使えなくなる場面も出てきているようです。
正直なところ、最終的に「これが原因だった」と言い切れる答えは分かりませんでした。
ただひとつ、はっきりと言えるのは、「使えるはず」という思い込みが一番危ないということです。
このとき、はじめて実感しました。
「いつものアプリが、いつもと同じように使えるかどうかは、もはや国名だけでは判断できない時代なのだ」と。




