長年、レジリエンス(回復力)はリーダーシップの美徳とされてきた。不確実な時代には不可欠と目される適応力や忍耐力、立ち直る力が称賛されてきた。しかしコロナ禍後の職場では、レジリエンスがリーダーの意図とは逆の効果を生むケースが増えている。組織を強化するどころか、機能していなかった構造へと静かに逆戻りさせている。
パンデミックで明らかになった人間的なレジリエンスのモデル
パンデミックのとき、多くの組織が驚くべきことを証明した。業績を損なうことなく、より人間的な働き方が可能という事実だ。柔軟性が広がり、信頼は増した。ウェルビーイングは個人の思いつきではなく、リーダーシップの正当な関心事となった。そして仕事をする場所や時間、働き方に関する長年の前提は、一夜にして覆された。
だがそれから数年で状況は真逆へと急展開している。
出社義務の厳格化、管理強化、柔軟性に対する許容度の低下、そして指揮統制型のリーダーシップの復活が一般的になった。多くの組織で暗黙のメッセージが明白になっている。そのメッセージとは、パンデミック時に学んだことが何であれ、今は「正常に戻る」時、というものだ。
問題は、その「正常」が人を追い詰めていたことだ。
レジリエンスがシステムの問題を覆い隠す
今日レジリエンスとされることが多いものは、健全な適応というより制度的な回避に近い。チームは少ないリソースで、より多くの仕事をこなすことが求められている。リーダーは忍耐を称賛する一方で、根本的な制約には手を付けない。バーンアウト(燃え尽き症候群)はシステムが発する信号ではなく、個人の問題として扱われる。
システムという観点では、これはレジリエンスではない。自己防御だ。
抽出型のシステムは驚くほど回復に優れている。素早く立ち直り、慣れ親しんだ階層構造を再構築し、運営ロジックを変えずに衝撃を吸収する。再設計なしにレジリエンスが強調されると、それはシステムが変化せずに生き延びる手段となる。その代償を払うのは内部の人間だ。
再設計によるレジリエンス
これは不可避ではなかった。
パンデミック初期に大企業数社がレジリエンスの異なるモデルを示した。ベライゾン、アクセンチュア、リンカーン・ファイナンシャル・グループなどの企業は2020年4月、行き詰まった分野から緊急需要のある分野へ数千人の従業員を迅速に再配置する企業横断型人材プラットフォームを共に立ち上げた。職務が減る中で個人に無限のレジリエンスを求める代わりに、リーダーたちはシステムそのものを再設計した。有意義かつ持続的に貢献できる場所へ人々を移動させたのだ。
これは耐え忍ぶこととしてのレジリエンスではなく、再設計によるレジリエンスだった。
当時、筆者は幹部たちと仕事をする中で、このレベルの柔軟性と信頼が実際に機能するところを見たら、なかったことにすることはできないだろうと思ったのを覚えている。恐怖が緩めば、組織は異なる方法、往々にしてより効果的な方法で運営できるのだという生きた証拠を目の当たりにした。
それでも多くのリーダーは元に戻った。



