ミクロレベルの改革
マクロレベルの解決策が選択肢から外れつつある以上、政策は今後も、的を絞ったミクロな介入へと傾いていく可能性が高い。こうした介入では、補助金よりも規制緩和の方が効果を発揮することが多い。中でも、許認可制度における改革は有力な選択肢として浮かび上がる。審査のプロセスが長期化し、審査が通るかも分からないような状況は、インフラ、エネルギー、住宅への投資を抑制し、物価に上昇圧力をかける。これらの手続きを簡素化すれば、供給が増え、多くの産業に同時に恩恵をもたらす形でコストを引き下げることができる。
現政権のエネルギー関連の取り組みも、有効に見える。ガソリン価格はピークから下落しており、多くの要因が絡んでいるとはいえ、規制変更やリース承認の迅速化が一定の役割を果たした可能性が高い。燃料コストの低下は輸送費に波及し、さらに幅広い産業が直面するコストを引き下げる。こうした節約分は、最終的には小売価格全般に反映されていく。
住宅や保育は、州や地方自治体の政策に左右されるため、連邦政府にとっては対応がより難しい分野である。それでも、補助金を地方の改革と結びつけることで、改革を促すことは可能だ。土地の用途に関する規制の緩和や高密度開発の容認を条件として、地方に補助金を配分することもできる。このような供給側のアプローチは、需要を刺激する補助金よりも有望である。需要側の介入は、希少な資源を奪い合う形で価格を押し上げがちで、特定の家庭を助けることはあっても、制度全体のアフォーダビリティ改善にはつながりにくい。
期待をリセットするという課題
「1世代に1度」と呼ばれるような規模の物価上昇は、ゆっくりとしか癒えない傷を残す。賃金が調整されるには時間がかかり、その過程は痛みを伴う。加えて、世論の感覚は必ずしも現実の経済状況と一致しない。
現時点では、的を絞った規制緩和やその他の小規模な供給側の改革が、最も現実的な選択肢である可能性が高い。これによって古い物価水準を取り戻すことはできないが、新たなコスト圧力の発生を防ぎ、特定の市場では価格を引き下げることはできる。より包括的な解決策も存在するが、それが広く政治的な支持を集める可能性は低い。
その結果、有権者は新しい「標準」に慣れるまで、なぜ生活費がこれほど高く感じられるのかと問い続けることだろう。一方で政治家は安心感を与える発言を続けるものの、政治的現実によって大規模な救済を提供する能力は限られている。したがって政策対応は今後も、米国人が直面するアフォーダビリティ問題の深いところにある構造的な原因ではなく、表面的な症状に向けられ続けることになる。


