食品サプライチェーンは、安定供給が揺らぎ始めた電力インフラに大きく依存している。食料・農業分野の電力消費は急速に増加し、世界でも最も電力消費の多い産業の一つとなった。わずかな停電でも食品供給網に連鎖的な損失をもたらし、コストを押し上げる。実際、一部の市場ではエネルギー関連コストが200%以上上昇している。さらに、世界の温室効果ガス排出量の約4分の1を占めるこの分野は脱炭素化への圧力にも直面しており、事業者は複合的なリスクを抱えている。食品サプライチェーンが求める安定した電力と、電力網が提供できる水準とのギャップは、急速に広がりつつある。
電力網への負荷増大とエネルギーコストの高騰が続く中、低炭素電力の安定的な確保は、食品サプライチェーンにとって水や種子の確保と同様に、事業運営の基盤となりつつある。
こうした中、再生可能エネルギーを活用し、発電から蓄電までを担うコンパクトなエネルギーネットワークであるマイクログリッドが、この課題の解決策として存在感を高めている。このアプローチを軸に、ある企業は食品サプライチェーンが直面するエネルギーリスクの緩和に貢献しようとしている。
「マイクログリッドは、主電力網から切り離して運用できるため、エネルギー需要を現地で賄うことを可能にし、広域電力網への負荷を抑え、システム全体のレジリエンスを高めることができる」と、AI駆動型マイクログリッドと電動モビリティシステムの構築・運用を手がける「NextNRG」(ナスダック:NXXT)のCEO兼会長、マイケル・ファーカスは話す。同社は食品産業をはじめとする重要分野に向けて、信頼性が高く、コストが安定した低炭素電力の供給を進めている。
食品業界が抱える課題
食品サプライチェーンは、電動灌漑(かんがい)や温室の気候制御、フル電動化が進む加工ライン、24時間稼働の冷蔵倉庫を含め、世界でも有数の電力消費産業となっている。中でも冷蔵倉庫は、年間の電力消費量が平方フィート当たり約25キロワット時に達し、一般的な商業ビルの約4~5倍に相当する。
このようなエネルギー依存の高さは、深刻な影響をもたらしている。世界全体の食品ロスの約13%に相当する年間およそ5億2600万トンは、不十分な冷蔵管理が原因とされる。停電などで温度管理が途切れやすい脆弱なコールドチェーンインフラによって、莫大な量の生鮮食品が消費者の手に届く前に腐敗してしまうのだ。
エネルギー消費の拡大は、冷蔵保管にとどまらない。「食の未来に向けたグローバルアライアンス(Global Alliance for the Future of Food)」によると、食品産業は世界における年間の化石燃料消費量の約15%を占めるという。同アライアンスは、世界の食品サプライチェーンが排出する化石燃料由来の温室効果ガスの量は、EU諸国とロシアの合計排出量を上回ると指摘している。
世界の食品サプライチェーンは、全世界の温室効果ガス排出量の約25~30%を占める。その内訳には、農業活動や森林伐採に加え、輸送や製造などエネルギーを多く消費するサプライチェーン活動が含まれる。



