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2025.12.26 12:00

AI時代の電力危機から食品業界を救え──マイクログリッド企業「NextNRG」が示す現実解

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食品分野におけるマイクログリッド市場

AIやデータセンターが老朽化した送電網に負荷をかける中、無停電電源、脱炭素化、エネルギー自立へのニーズがマイクログリッド市場を牽引している。食品分野全体での普及率はまだ限定的だが、冷蔵施設、温室、屋内農場、地方の食品加工施設など特定分野での利用が増加している。その代表例が、カリフォルニア州セントラルバレーの大規模冷蔵施設を供給するオフグリッドシステムや、農場・屋内栽培施設における太陽光ハイブリッド設備だ。

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マイクログリッド市場は、2030年に951億6000万ドル(約15兆円)規模へ拡大し、2025年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は17%に達する見通しだ。一方、農業向けマイクログリッドは、2035年までに150億ドル(約2兆4000億円)に拡大し、2025年から2035年にかけてのCAGRは14.2%と見込まれている。

食品大手の中でも、マイクログリッド導入に取り組む事例が出始めている。ウェンディーズとチックフィレイは、カリフォルニア州内の複数店舗で実証実験を展開中だ。チックフィレイは、屋上太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、電力網への負荷が高まる局面でのコスト削減と安定供給の効果を検証している。一方、ウェンディーズは、カリフォルニア州ワスコの店舗を太陽光発電によるマイクログリッドで稼働させ、エネルギー・アズ・ア・サービス(電気などのエネルギーの提供に加え、設備や制御技術を含めた総合的なソリューション)のモデルでの運用を進めており、レジリエンス向上と温室効果ガス排出削減を目指している。

温室効果ガス排出を正味ゼロとする「ネットゼロ」へのコミットメントも、マイクログリッド導入を後押しする要因となっている。例えば、マッケイン・フーズやネスレは、長期的な気候目標を掲げている。ダノンも南アフリカでマイクログリッドを導入し、2050年のネットゼロ達成を目指しながら、頻発する停電リスクから乳製品事業を守っている。

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アフリカ各地では、欧州委員会が資金提供する国際コンソーシアム「RePower」プロジェクトが、マダガスカル、ニジェール、セネガルの農業コミュニティにおけるマイクログリッドへのアクセス拡大を進めている。同プロジェクトでは、アフリカ・グリーンテックが開発したオフグリッド対応の太陽光冷蔵設備「Cooltainer」や、1時間あたり最大9000リットルの揚水能力を備える太陽光水ポンプシステム「PumpUP」が導入されている。これらのツールは、送電網が未整備の地域においても、安定した冷却と灌漑を可能にしている。

こうした電力供給を巡る構造変化の背景には、電力需要の急速な拡大がある。AIデータセンターの電力消費は2030年までに倍増すると見込まれ、電力会社はこれらの施設向けに新たな供給能力の確保を優先している。一方で、冷蔵倉庫や加工工場、EV配送車両を抱える食品関連事業者は、逼迫する電力網の中で電力確保を巡る競争に直面している。しかも、多くの場合、彼らの交渉力は限られているのが実情だ。

もはや電力需要が急増するか否かは、議論の余地がない。焦点となるのは、電力系統の優先順位や価格の安定性、信頼性が各産業セクターにどのように配分されるかという点だ。

ファーカスはこうした変化を受けて、生産者、加工業者、流通業者が、水や種子を地元で、予測可能かつ高い制御性のもとで確保するのと同様に、電力を安定的に確保するためのベストプラクティスを模索し始めており、食品サプライチェーンにおけるエネルギー管理の転換点になっていると指摘する。

「農場や倉庫、食品工場、港湾、食品流通、さらには食品配送用のEVフリートを運営している企業にとって、明確なエネルギー戦略は不可欠だ。マイクログリッドは、最も有望な解決策の一つとして浮上している」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=朝香実

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