日本銀行は19日、政策金利を30年ぶりの高水準となる0.75%に引き上げた。これは日銀にとって、政治的に危うい一線を越えるような行動だった。
日銀の植田和男総裁らをメンバーとする政策委員会は、今回の会合で25ベーシスポイント(0.25%)の利上げを決めた。なぜこれが日銀にとって、あとから失敗の始まりだったとも振り返られかねない思い切った行動だったのかと言えば、就任してまだ日の浅い高市早苗首相が、かねて利上げに反対の姿勢を示していたからだ。また、こちらがもっと重要かもしれないが、米国の関税の影響を受けて、日本経済が2025年をリセッション(景気後退)入りか、それにかなり近い状態で終える可能性を示す経済指標が出ているなかで、利上げに踏み切ったからだ。
もちろん、植田は正しい決断をした。日本ではインフレが3%のペースで進行する一方、賃金は伸び悩んでいる。消費者がデフレからスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)への移行を歓迎していないのは明らかだ。
他方で、短期金利をようやく1995年以来の高水準にまで引き上げた日本は、米国の金利は1%に下がるべきだとするドナルド・トランプ米大統領の正気とは思えない要求に、警告を発する格好にもなっている。
植田のチームは、利上げ路線が継続することを市場に納得させようと躍起になっている。しかし、経済情勢が日々複雑さを増すにつれて、市場にそうした見方を維持してもらうのは難しくなるかもしれない。
ここで植田が目論んでいることのひとつは、日本の10年物国債の利回りを2%超に押し上げている債券トレーダーたちに、2026年の日本は2006〜07年の金利正常化の失敗を繰り返さないと信じてもらうことだ。日銀は2007年初めまでに、どうにか短期金利を0.5%まで引き上げていた。これは当時、日銀が初めて金利をゼロ近辺に引き下げた1999年以降で最も高い水準だった。
しかし、この水準は長く持たなかった。緩やかなリセッションが起こるや政治側が反撃に出て、景気悪化は日銀のせいだと非難した。その後、2008年に米金融大手リーマン・ブラザーズが破綻すると、日銀は再び金利をゼロ近辺に引き下げ、量的緩和のスイッチも再びオンにした。



