依存症を克服するのは難しい。史上最も手厚く一貫した企業福祉プログラムはアジア2位の経済国に、断ち切りがたい惰性を生んでしまった。日本がずっと避けてきた相当なディスラプション(創造的破壊)を起こさない限り、そこから抜け出すことはできない。
だというのに、どうしてトランプ2.0は、日本が失敗した実験をあえて繰り返そうとしているのか。あるいは、より踏み込んで言うと、なぜ積極的にドル安を追求しようとしているのか。
ひとつにはもちろん、手っ取り早く経済を活性化するためだろう。長期的なインフレという後遺症はお構いなしにだ。2%でなく3%のインフレ率をニューノーマル(新常態)にしたり、「慢心の強気相場」を演出したりするつもりのようだ。
9月には、トランプがFRB理事に指名したスティーブン・ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長の発言を受けて、議員らは慌ててネットで検索に追われた。ミランが、FRBには物価の安定と雇用の最大化に加え、3つ目のマンデート(責務)があると言及したからだ。「議会は賢明にもFRBに対して、物価安定、最大雇用、そして穏やかな長期金利を追求する任務を与えた」と彼は発言した。
第3の架空の責務は、FRBよりもむしろ日銀にこそ似つかわしいように聞こえる。トランプワールドには、手遅れになる前に誰かがこう伝えたほうがいい。過度に低い金利がもたらす影響に関して、日本を模範ではなく反面教師にすべきだ、と。


