アジア

2025.12.21 08:00

トランプの「金利1%」要求は狂気の沙汰 理由は日本が知っている

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植田日銀は同じ運命をたどるのだろうか。植田には、金融引き締めを続ける裁量と度胸があると思いたい。ひょっとすると、彼は実際にやり遂げるかもしれない。しかし、高市政権は黙って見守りそうにはない。高市は昨年、日銀がいま利上げするのは「あほ」だと牽制している。

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世界情勢に足を引っ張られるおそれもある。トランプの政治的な勢いが陰りを見せ、米国経済が減速するにつれて、彼が国内で政治ナラティブを再構築すべく、再び関税の引き上げに動く可能性はないのか。

そのトランプは来年5月にかけて、連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任人事を大々的に演出すると見込まれる。次期議長の職務記述書にはこう大書されているのだろう。「できるだけ早く金利を1%まで引き下げること」と。

ここで考えるべきなのが、日銀の26年におよぶ超低金利政策は日本をどこへ導いたかだ。結局、良いところへはどこにも行き着けなかった。

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そもそも、ゼロ金利と量的緩和は経済の緊急事態への対応策だったことを思い出す必要がある。1980年代のバブル経済が崩壊すると、日本の銀行は莫大な不良債権を抱え込んだ。しかし、銀行が損失を受け入れ、バランスシートを整理する代わりに、政府は日銀による救済に頼った。その救済は四半世紀も続くことになった。

この治療法は裏目に出た。点滴をこれほど長い間続けても、日本のアニマル・スピリットはよみがえらないどころか、さらに萎えてしまった。政府は、行政の効率化や規制の削減、労働市場の実力主義化、スタートアップの後押し、生産性の向上、女性のエンパワーメントに力を入れる切迫性が薄れた。企業も、イノベーションを起こしたり、構造改革を進めたり、あるいは新しい製品や技術のために大きなリスクをとったりする動機が弱くなった。

その結果、現在どうなっているか。隣の中国で電気自動車(EV)の比亜迪(BYD)、AI(人工知能)のDeepSeek(ディープシーク)をはじめとする企業がニュースの見出しを飾るような成功を次々に収める一方で、日本は来年の円の対ドル相場の行方ばかり気にしている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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