世界中に数百社あるヒューマノイドロボット(人型ロボット)のスタートアップの大半は、工場、地域社会、家庭など、労働のためのロボットを作っている。シリコンバレーのスタートアップであるファウンデーション(Foundation)も同様だが、同社の身長5フィート9インチ(約175cm)、体重180ポンド(約82kg)のヒューマノイドロボット「ファントム」は、米軍を顧客として明確に狙っている。実際、ファントムは殺傷能力のある武器を携行し、戦闘を行う。そしてCEOのサンケート・パタックは、2027年末までという記録的な短期間で、5万体を製造する計画だ。
米軍への導入を見据え、殺傷能力のある武器を携帯可能な人型ロボットを開発
「米軍がより効果的に任務を遂行できるよう、より賢い道具を提供するために本気で努力すべきです」とパタックは、最近のTechFirstのインタビューで筆者に語った。ファントムにM4カービン銃を持たせることにも、ためらいがない。「最初に突入するのがおとなしい存在なら、敵は本格的には姿をみせないでしょう。だから、最初に突入するのは、殺傷力のある存在でなければならないのです」と付け加えた。
もちろん、軍事利用だけがファウンデーションの計画ではない。
同社は、ほぼ記録的な時間でファントムを作り上げた。ファウンデーション設立から18カ月以内に、パタックはすでに量産機を完成させ、(非公表の)提携先拠点で実際の生産業務を行っている。AIと次世代アクチュエーターに関する2件の賢い買収により進捗が大きく加速した結果であり、スピード感はApptronik(アップトロニック)にほぼ匹敵する。
2027年末までに合計5万体を製造し、驚異的なスピードでの増産を目指す
ファウンデーションのスケール計画はさらに強気だ。今年は40体、来年は1万体、そして2027年には4万体のヒューマノイドロボットを生産ラインから送り出すという。パタックは「極めて攻めた計画」であることを認めつつも、同社が実現できる「ゼロではない可能性」があると語る。
理由の1つは、ファウンデーションのチームが、テスラ、1X(ワンエックス)、ボストン・ダイナミクス、SpaceXといった企業から採用したトップ人材を擁していることだ。
「製造責任者は元テスラの製造ディレクターです」とパタックは筆者に語った。「Model XとModel Yの立ち上げを担当しました。だから教訓が身に染み付いているのです。自動化を急ぎすぎないことです」。
ファントムはリース形式による運用を行い、年間の継続収益は約7850億円と見込む
ファウンデーションがこの常軌を逸した成長をやり切れれば、顧客は現れるとパタックは自信を示す。ロボットは販売ではなくリースにするつもりで、顧客も何百社も必要ではない。
「50件の契約は要りません」と彼は筆者に語った。「本当に質の高い大口契約を5件ほど取れればいい。それらは年間の継続収益(ARR)の発注書ベースで数億ドル(数百億円)規模まで拡大し得るからです」。
実際、ファウンデーションが生産目標を達成し、販売がパタックの想定どおりに進めば、同社は一夜にして単なるユニコーン企業(以上のもの)になり得る。2026年と2027年に合計5万体を製造できれば、年間の継続収益はリースで約50億ドル(約7850億円。1ドル=157円換算)になると、彼はいう。
1体あたり年額約1570万円のリース料は、人間3人分から5人分の働きに相当
少し計算すれば、ファウンデーションが現在、ロボット1体あたり年額約10万ドル(約1570万円)でリースする計画であることが分かる。レストラン、倉庫、生産ラインなどの労働コストが平均で年4万ドル(約628万円)程度だとすると高く見えるが、実は「ウェットウェア」(生身の人間)より割安だ。ロボットはほぼ24時間稼働できるため、1体で人間3〜5人分に相当する働きをするからである。10万ドル(約1570万円)に保守と修理が含まれていると仮定すれば、かなり大きな割引になる。
ほぼフル稼働であれば、ロボットは雇用主に対して年16万6000ドル(約2600万円)の節約をもたらし得る。ロボットのダウンタイムと人間の監督者の存在も織り込んだ、より現実的な計算では、年9万ドル(約1400万円)程度の節約となる。



