スタートアップ

2025.12.22 12:00

戦争と労働向けの人型ロボ──米新興Foundationが2027年末までに5万台の製造を計画

ファウンデーションのファントム。(C)Foundation Future Industries(同社サイトで公開中の動画より)

ロボットメーカーは人間と同等の性能を実現できておらず、課題は多い

ただし、これらは当然ながら、ロボットが人間と同じ速度で、人間と同等にうまく仕事ができることが前提だ。まだどのヒューマノイドロボットメーカーも、それを実現できていない。したがって、賢明な投資家は、ファウンデーションの「ナプキンの裏の走り書き」の最良シナリオに、少なくとも数年を上乗せするか、ハードウェアとソフトウェアのスタックが人間同等の能力へと立ち上がる過程で、ロボット労働の価値を大きく割り引いて見ることになるだろう。

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これは、ファウンデーションの高性能なロボットの「筋肉」が、過熱せずに複数シフト稼働できるとしても、である。同社は、高効率でバックドライブ可能(外力で逆駆動できる)なアクチュエーターを用いることで、ファントムを強力でありながら、人のそばでも比較的安全に動けるものにした。

しかし、軍事用途もある。

ロボットの能力や数は、戦争を未然に防ぐ“抑止力”になるか

好き嫌いは別として──そして映画『ターミネーター』で動く姿を見た人なら、おそらく好きではないだろうが──ヒューマノイドロボットは軍事用途で非常に大きな有用性を持つ可能性がある。兵士や支援スタッフが担う必要のない雑務をさせることもできるし、兵士に武器や弾薬を運ぶこともできる。優秀な指揮官が自分の戦闘員に負わせたくないリスクを取らせることもできる。ロシアとウクライナの紛争では、車輪型ロボットで類似の用途がすでに見られる。

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そして、そうした用途には、市街戦のシナリオで武器を持って建物に入ることや、丘の頂に最初に姿を現すこと、洞窟に入って敵戦闘員を捜索することも含まれる。

実際、パタックは、ヒューマノイドロボットが軍事力を「より不確定にする」のではなく、むしろ「より精密にする」可能性があると主張する。空爆や重火器を用いる代わりに、地上型のヒューマノイドロボットを使って建物に侵入し、状況を直接評価し、正しい判断を下せるという理屈だ。ファントムは殺傷に関する意思決定を完全自律で行うわけではないが、ファウンデーションは、現在の軍用ドローンに近いモデルを構想している。すなわち、ロボットが移動と航法を自律で担い、基地(あるいは近距離だが安全に隠れた場所)にいる人間が目標選定の制御を維持するというものだ。このアプローチが成り立つなら、ファントムのようなヒューマノイドロボットは、戦争がどのように戦われるかだけでなく、いつ戦争が回避されるかも変えるかもしれない。“抑止力”というものが、人間の派兵ではなく、工業力によって拡張可能なロボットの能力や、目に見える形で膨大な数のロボットを示すこと(戦力の可視化)が、戦争を未然に防ぐ仕組みに変わるからだ。

さらに、ターミネーター風のヒューマノイド・ドローンが想起させる冷酷な殺戮のイメージとは逆に、パタックは、こうしたロボットは実際には非常に効果的な平和維持要員になり得ると主張する。

「米軍が、実演できるロボットを例えば10万体ほど持っていたなら、多くの戦争は始まる前に概ね終わると思います」と彼は言う。

これは筋が通る。米国は、政治的反発を招き得る人命損失を伴う人間の投入よりも、ロボットの投入を選びやすくなる。そう分かっていれば、反政府勢力、武装勢力、テロリスト、その他の敵戦闘員は、そもそも戦争を始めにくくなるかもしれない。

しかし逆もあり得る。軍が戦闘用ヒューマノイド・ドローンを使う可能性が格段に高まれば、戦争はむしろ起きやすくなるかもしれない。

ヒューマノイドロボットの倫理は複雑になり、現代の技術は殺傷能力の水準を引き上げる

いずれにせよ、ヒューマノイドロボットの倫理は、さらに複雑になろうとしている。そして、中国やロシアが「戦争用ロボット」の開発を考えていないと思うなら、考え直したほうがいい。本質的には(ヒューマノイドの形ではないにせよ)、すでに彼らはそれを作っている。米軍も同様で、同軍はプレデター(Predator)ドローンをすでに約30年運用してきた。

また、最初の自動化・無人の戦争兵器は第二次世界大戦まで遡るかもしれない。ドイツのV-2ロケットだ。そこには非常に粗雑で初歩的な自律誘導・制御があり、史上初の戦争ロボットだった可能性がある。

今私たちは、その高度化の水準を引き上げている。そしてもちろん、殺傷能力も。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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