サイエンス

2025.12.22 18:00

研究者驚愕 「集団で狩り」をする世界で唯一のヘビ、キューバボア

洞窟に潜むキューバボア(Shutterstock.com)

「ヘビの知能」の秘密に迫る

謙虚な姿勢で研究にあたれば、爬虫類の認知能力は、大きな成果が期待できる分野だ。今まさに知見が集まりつつあるところであり、多くの種については、まだほとんど何も知られていない。特にヘビは、研究手法の面でいくつかの課題がある。具体的には、観察が難しいこと、鳥類や哺乳類を念頭に設計された認知課題には、しばしばまったく関心を示さず、実験が難しいことなどだ。

advertisement

それでも、ディネッツが示したような知見から、ヘビの行動レパートリーは、従来の想定よりも柔軟なものである可能性が浮き彫りになった。特に注目すべき点は以下の通りだ。

・空間認識:ボアは、他個体の位置関係を考慮して、自分の位置を戦略的に選択する能力を示した
・学習またはパターン認識:協力的な位置取りをしたボアは、より高い採食効率を実現した。このパターンは、観察期間を通じて一貫していた
・社会的手がかりへの反応:友好関係にない個体同士であっても、ヘビは、同種他個体の存在や行動に応じて適切な行動を取った

誤解のないように言っておくと、この研究結果は、キューバボアが夜ごとにひそかにディナーパーティーの計画を立てているとか、オオカミやカラスの群れと同程度の行動協調能力があるといったことを意味するわけではない。ボアが認識しているのはおそらく、他個体から近い位置を選ぶことによって、狩りの成功率が上昇すること。あるいは、洞窟の壁面に一定間隔で待機することで、より多くの獲物を捕獲できることだろう。こうしたメカニズムは、あまり複雑な理解がなくても、十分に機能する。

advertisement
SEE
ALSO

サイエンス

カラスは人間の顔を認識できる──そして何年も根に持つ

なぜキューバボアで協同狩猟が進化したのか?

この知見においては、生態学的な背景も重要だ。ボアにとって、コウモリを捕食する行動がいかに難しいものであるかを十分に考慮しなければならない(コウモリは、洞窟の壁に張りつき、狭い空間を高速で移動する)。

ヘビが単独の場合、よほど絶妙のポジションで待機し、完璧なタイミングで攻撃しないかぎり、コウモリを空中でキャッチするのは難しいだろう。だが、コウモリの移動経路に、9匹のヘビが等間隔で待機していれば、集団的効果として、コウモリの飛行速度を遅らせ、移動範囲を狭めることができる。これにより、各個体の捕食の成功率が上昇するのだ。

進化的に見て、このような行動(すなわち、摂取エネルギー量を安定して増加させる行動)は、集団内に定着しやすい。それ以上に重要なのは、この行動には、安定した社会集団や、長期にわたる同盟関係は必要ないことだ。必要なのは単にそれぞれの個体が、互いの存在に応じて自らの行動を調整して利益を得ることだけだ。

また、キューバボアの生息環境では、決まった採食場所で同種他個体と遭遇する可能性が十分に高い。洞窟の入口は、1年の決まった時期、あるいは1日の決まった時間に、多数の獲物が集中する「ホットスポット」だ。協力的な相互作用が繰り返される場所として、最適な条件を満たすところなのだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事