特筆すべきは、ボアたちが、単に獲物が豊富な洞窟に集まっていただけではないことだ。ディネッツの観察と分析によれば、ボアたちは、ただ単に食料が豊富なエリアに折り重なるように集合していたわけではなく、自発的に他個体の位置を考慮して行動していた。
ディネッツは論文のなかで、以下の2つの基準を満たす行動を「協同狩猟」と定義した上で、キューバボアの戦略的行動は、これら2つの条件を満たすと論じた。
1. 捕食者が他個体との時間的・空間的関係を考慮して、自身の行動を調整している
2. 結果として、各個体の採食効率が、単独の場合よりも向上している
ヘビの戦略的協力は、なぜ重要なのか
一般人からすると、これだけを聞いても革命的な発見とは思えないかもしれない。だが両生爬虫類学者にとって、これは驚愕の研究だ。ヘビに関する数々の基本的前提を、考え得るかぎり最高の形で覆したものだからだ。
非鳥類型爬虫類（Non-avian reptiles）は、長年にわたり、極めて大雑把な形で理解されてきた。つまり彼らは、鳥類や哺乳類と比べると、単純で、本能に支配された、認知能力に劣る動物とみなされてきたのだ。
こうしたステレオタイプは近年（ディネッツの研究以前から）、再検討されつつあったものの、キューバボアの協同狩猟は、やはり唯一無二の画期的な知見だ。協同狩猟は、哺乳類でさえごく一部の種でしか知られておらず、ましてやヘビでは、一つとして前例がないからだ。
この観察事例のなかで、特に注目すべきは、狩猟戦略として極めて意図的な位置取りが必要だったことだ。忘れられがちだが、協力行動を取る際に、必ずしも私たちヒトが想像するような会話や計画は必要ない。動物界における協力は、驚くほどさりげなく行われる。
ボアはおおむね夜行性で、ほとんど人目につかない動物だ。ここから、一つの新たな疑問が浮かぶ。もしかしたら、私たちが見落としているだけで、ヘビが行動協調を示す例はもっとたくさんあるのではないだろうか？
