大阪・関西万博が終わり、早くも2カ月が過ぎた。開幕前には全国的な機運が上がらず、前売り券の販売は目標を下回っていたが、夏休み以降、特に閉幕間近の1カ月で来場者が急増。最終的には、184日間で一般来場者はのべ2500万人を超え、運営収支見通しは最大280億円の黒字となった。
民間シンクタンクのアジア太平洋研究所は3日、万博開催の経済波及効果が全国で3兆541億円に上ったという試算を発表した。当初は「気持ち悪い」という声も聞かれた公式キャラクター「ミャクミャク」のグッズ人気が大きく貢献したという。関西エリアでは、まだまだ名残惜しむ雰囲気が漂っているとも聞く。
158カ国・地域が参加し、180以上のパビリオンが展開された今回の万博。会期中には連日さまざまなイベントが行われ、その数は大小あわせて数千にもおよんだ。そのひとつが、閉幕直前の10月10日-11日に客船「飛鳥Ⅱ」で開催された「EARTH MART FORUM」だ。
EARTH MARTは、「食を通して、いのちを考える」をコンセプトに小山薫堂がプロデュースしたシグニチャーパビリオン。茅葺き屋根の館のなかに“空想のスーパーマーケット”を展開し、暮らしを支える食材、受け継がれている食文化、未来を変えうるテクノロジーなどを展示。当たり前すぎて見過ごしがちな食、いのちの連鎖を考えさせるそのパビリオンは、体験デザインのオリンピックと呼ばれる「ワールド・エキスポオリンピック」、「日本空間デザイン賞2025」でそれぞれ金賞を受賞した。
場外では、Forbes JAPANとともに「食の未来を輝かせる25人」を選出し、9月25日発売号で発表。そのアワードセレモニーも兼ねた、EARTH MARTの集大成ともいえる船上イベントには、食にかかわるおよそ250人が参加した。
調和とはぶつかりあうこと
食の世界は、実に幅広い。そこには生産者や料理人、研究者、起業家、投資家……直接食に関わらずともそのバリューチェーンを支えている人が無数にいる。食にかかわりながらも、あまり交わることのなかった多様な面々が同じ船に乗り、24時間を過ごし、食の未来を語り合う。それがEARTH MART FORUMの狙いだ。
その始まりは、乗船後のランチから。「食の未来を輝かせる25人」受賞者が提供する食材を用いた特別ブュッフェは、ウニ再生養殖のパイオニア「北三陸ファクトリー」のウニバタースプレッド、海藻の栽培生産と食文化を切り開く「シーベジタブル」の若ひじきサラダ、NY創業の発酵調味料ブランド「Cabi」のマヨネーズなど、ここでしか起きえないラインアップが並び、ゲストたちの会話に花を咲かせた。
ふと外に目をやると、進行方向右手に万博会場が見えてくる。数万人もが集まっているだろう大屋根リングを眺めながら、船は加速していった。
食後、参加者が一堂に揃ったギャラクシーホール。オープニングセレモニーのステージで、プロデューサーの小山薫堂は、「ほんとうの調和とは、お互いに意見をぶっつけ、ぶつかりあうこと」と、「人類の進歩と調和」を掲げた1970年の大阪万博で岡本太郎が残した言葉に触れた。
「ただ仲良くするだけでなく、ぶつかってこそ、未来が開ける。そんな思いから、あえて考えの異なる方も集めています。銀行の頭取など、出資してくれそうな人も多く呼んでいます。ここで何らかの会話がなされ、それをきっかけに新しいプロジェクト、色々な化学反応が生まれてくると信じております」



