船上のメインコンテンツのひとつが「食の未来を輝かせる25人」によるトークセッション。その名も「食の未来会議」は、4会場、3つの時間帯に分けた12本。「聞きたいセッションが同じ時間帯にある」と悩む声も聞こえるなか、各所で“ぶつかりあいと調和”が繰り広げられた。
例えば、ラーメンを文化にするべく深める「飯田商店」の飯田翔太と、料理のすべてを記録・データ化し再現を試みる「録食」野元知子のトークテーマは「25年後の料理人の在り方」。録食が普及すれば、料理人の価値は下がるのか? はたまた高まるのか? 録食で再現される料理は「本物」なのか? 互いに理解が深まりながら、そう遠くない未来に実現しうるテクノロジーに向けて、両者が協業する可能性も語られた。
「FARO」パティシエの加藤峰子と北海道コンフェクトグループの長沼真太郎は、「お菓子の未来から考えるサステナブルなフードシステム」を語った。加藤は植物性の素材など、環境や動物に負担をかえけない菓子づくりを追求。一方、長沼はおいしさのために本物の牛乳にこだわるべく、山地酪農まで始めた人物だ。ともに目指すのは「おいしさ」でありながら、その「おいしさ」は同じではない。そして、どちらが正解というわけでもない。
「未来の食の安全保障」をテーマにリージョナルフィッシュの梅川忠則と登壇したタネト店主の奥津爾は、「彼はゲノム編集という領域にいて、僕は在来種を守る活動をしている。本当に意見が真逆の2人なんですが、今回話してみて、めちゃくちゃ噛合って面白かったんです」とコメント。肩書きや属性関係なく“人間同士”として話しあえたことが自分の社会との関わり方を変えたという。
アペリティフ、ディナー、観月会
夕陽が沈みゆくプールサイドはアペリティフタイムに。そこでは、全国500以上の酒蔵を訪問してきた中田英寿オーガナイズのもと、“未来に向けた革新的な取り組みをする”5つの酒蔵のポップアップが展開された。日本酒を楽しみ、暗くなる海を眺めていると、“ランデブー”のアナウンスが。ランデブーとは、複数の客船が洋上で出会い、並走すること。夏に就航したばかりの「飛鳥Ⅲ」と「飛鳥Ⅱ」の出会いにデッキがわいていた。
ディナーは、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」の過去受賞者たちとコラボレーション。審査員も務めた落合務シェフ監修のもと、6人の実力派シェフが腕をふるい、この場限りの特別なコースを提供。一部をのぞいて“くじびき”によって席が決まるという仕掛けもあり、親しい人とも、初めましての人とも、ともにたくさんの“おいしい”が共有された。
洋上のプログラムはまだまだ続く。ディナーの後はプールサイドで観月会を開催。残念ながら月は一瞬顔を見せただけだったが、穏やかな海の風を感じるなか、平原綾香とコブクロの小渕健太郎がスペシャルライブを披露。聴き入ったり、皆で体を揺らしたり、音楽がゲストをひとつにつないでいた。


