ハワイのマウナケア山頂にあるジェミニ天文台のジェミニ北望遠鏡が2025年11月下旬、太陽の向こう側を通過して再び姿を現した恒星間彗星「3I/ATLAS」の鮮明な画像を捉えた。この新画像には、ほのかな緑色の輝きをまとった天体が写っている。
3I/ATLASは12月19日(金)に地球に最接近し、まもなく太陽系を離れて遠ざかっていく。
恒星間彗星「3I/ATLAS」とは?
3I/ATLASは太陽系外の別の恒星系から飛来した彗星で、現在、太陽系を通過中だ。銀河系(天の川銀河)の中心方向からやって来たとみられる。2017年に見つかったオウムアムア(1I/2017 U1 ('Oumuamua))、2019年のボリソフ彗星(2I/Borisov)に続き、観測史上3例目の恒星間天体である。
この彗星は2025年7月1日、南米チリのリオウルタドにある小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)の望遠鏡によって発見された。
3I/ATLASの起源と挙動をめぐってはさまざまなメディア報道があるが、その多くは、米ハーバード大学の天体物理学者アヴィ・ローブ博士が「異星人の宇宙船」である可能性を示唆したことに端を発している。しかし、これまでの研究によれば、この天体の挙動は太陽系を周回する彗星によく似ている。
緑色の輝き、その理由は
今月に入って公開された一連の新画像は、ハワイ島のマウナケア山に設置されたジェミニ北望遠鏡のジェミニ多天体分光器(GMOS)を用いて2025年11月26日に撮像されたものだ。3I/ATLASはしばらく太陽の陰に隠れて地球からは見えなかったが、おとめ座にある三重星系ザニア(おとめ座η星)付近に再び出現した。
トップの画像は、望遠鏡の視野の中央に彗星を固定し、青・緑・オレンジ・赤の4種類のフィルターを通して露光撮影した画像を合成している(背景の星々は彗星に対する相対的な位置が露光中に変わったため、カラフルな破線として映っている)。3I/ATLASは、ほのかに緑がかった輝きをまとっているように見える。
ジェミニ北天文台の科学者チームによれば、これは彗星が加熱されたことで核の氷が蒸発し、放出されたガスの雲(コマ)が緑色の波長の光を放っているからだ。具体的には、コマに含まれる二原子炭素(C2)が緑色の光を放出しているのだ。
対照的に、3I/ATLASが10月に太陽に最接近する前、チリに設置されているジェミニ南望遠鏡が9月に捉えた画像は赤みを帯びていた。
3I/ATLASの今後
研究者らは3I/ATLASが太陽に接近し、今また離れていく過程を観測しているが、太陽系から遠ざかって天体が冷却される過程でどのような挙動を見せるのかについては、まだわかっていないことが多い。観測にはタイムラグが生じる場合があり、数カ月後に爆発的な活動や化学変化が起こる可能性もある。人類は望遠鏡を用いて、こうした変化を注視し続けることになるだろう。
19日に地球最接近
3I/ATLASは2025年12月19日、地球に最接近する。最接近時の距離は約2億7000万kmで、地球から太陽までの2倍弱だ。地球にとって危険は全くない。



