欧州

2025.12.19 09:00

「女性なしでは戦争に勝てない」 ウクライナの前線で女性兵士や活動家が活躍

ウクライナ中部キーウ州の基地で銃器訓練を行う同国軍の女性兵士。2024年11月2日撮影(Yevhenii Vasyliev/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナ中部キーウ州の基地で銃器訓練を行う同国軍の女性兵士。2024年11月2日撮影(Yevhenii Vasyliev/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナ無人システム部隊は4月、戦闘用の無人機(ドローン)やロボットを運用する女性中心の部隊「ハーピーズ」の創設を発表した。同部隊には男性も含まれるが、敵軍兵士を死に至らしめる最後の一撃は女性のみが担当すると宣言している。

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ロシアによるウクライナ侵攻が5年目に突入しようとする中、人員不足と作戦上の負担により、ウクライナでは女性が最前線でボランティアや兵士としての役割を担い、人道支援や戦闘部隊の空白を埋めている。

ウクライナ国防省は、1月時点で7万人以上の女性が軍務に就いており、うち約5500人が戦闘任務に従事していると説明した。これは総兵力の約8%に過ぎないものの、軍のジェンダー顧問を務めるオクサナ・フリホリエワによると、2021年以降約40%増加している。フリホリエワは米NPRの取材に対し、ウクライナ軍では現在、妊娠中の場合も含め、ほぼ全ての分野で女性が活躍していると述べた。

ウクライナ国家警備隊は最近、初の女性のみで構成される一人称視点(FPV)無人機攻撃部隊を南部ザポリッジャ州の戦線に派遣した。同部隊は自ら車両を運転し、兵器を製造するとともに、男性隊員なしで実弾攻撃任務を遂行する。米紙ワシントン・ポストによると、同部隊による最初の攻撃でロシア軍の榴弾砲が破壊されたことが確認されると、部隊の指揮官はこう述べた。「女性なしではこの戦争に勝てない」

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人道支援活動を指揮するウクライナの女性

人道支援でも女性の存在感が高まりつつある。ウクライナ中部ドニプロでボランティア活動に従事するアリナ・ホロウコは、人道支援団体「ドブラスプラワ」の主任調整役を務める。同団体は、2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以降、前線地域から4万人以上の民間人を避難させてきた。

ホロウコは筆者の取材に対し、侵攻開始から2日目に基本的な救急救命訓練と緊急時対応を調整する小規模なグループをSNS上で組織し、この取り組みを開始したと語った。少数のボランティアから始まった活動は、ロシア軍のミサイル攻撃が激化するにつれ、市民が自ら貢献する方法を探る中で急速に拡大していった。初期の取り組みには、都市防衛に向けた火炎瓶の準備も含まれていた。市民の要求の変化とともに、同団体の焦点は人道支援の物流と民間人の避難活動へと移行した。

わずか数日のうちにホロウコはグループの調整役として頭角を現し、倉庫の確保や物資の手配、人員の管理を行うようになった。特に砲撃が激しい地域からの避難要請が急増する中、ドブラスプラワはSNSなどを通じて活動の範囲を広げ、全国の運転手や医療従事者、仮設住宅を取り込んでいった。

ホロウコは、この取り組みは分散的だが互いの信頼に基づいており、砲火の下で民間人を救出するために危険を冒すことをいとわない一般市民の善意に頼っていると述べた。その上で、避難者の多くは人が殺される場面を目撃し、通信手段や避難場所もないまま逃げてきたため、精神的なショックを受けていると語った。ボランティアの運転手は危険を顧みず、ロシア軍の陣地近くで活動を続けている。

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翻訳・編集=安藤清香

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