この1年間、コンソールゲーム機を買う必要性を感じなかったとしても、それは決してあなただけではない。サーカナの新たなレポートによれば、家庭用ゲーム機業界は、本来ブラックフライデーが販売を押し上げるはずの11月において、2005年以来最悪の販売金額を記録した。さらに、パッケージ版ソフトの売上は1995年以来最悪の水準に落ち込んでいる。
この低迷は業界全体に及んでおり、いわゆる「ビッグスリー」のいずれも例外ではない。Xbox Series X/Sの販売は前年同月比70%減という壊滅的な落ち込みとなった。ソニーのPlayStation 5も40%減と大幅に減少している。Nintendo Switch、および6月に発売されたばかりのNintendo Switch 2を合わせた販売も10%減となった。
なぜなのだろうか。理由は数多く存在するが、単純にいえば「価格は高く、消費者の可処分所得は少ない」という点に尽きる。
関税やその他の市場環境の影響により、新型ゲーム機の価格は急騰している。
Xboxは2025年にハードウェア価格を2度引き上げた。その結果、Series Sの価格は400ドル~450ドル(約6万2200円~約7万円)となり、PlayStation 5の発売当初の価格よりも高い(編注:1ドル=156円換算。すべて米国における販売価格。以下同)。また、Series Xの価格は現在、600ドル~800ドル(約9万3400円~約12万4500円)となっている。
一方のソニーも、最終的にはこの動きに追随せざるを得なかった。すべての本体価格が50ドル(約7800円)引き上げられ、PlayStation 5のデジタル・エディションは500ドル(約7万7800円)となり、発売時より100ドル(約1万5600円)高い価格となった。標準モデルは550ドル(約8万5600円)、Proは750ドル(約11万6700円)だ。PlayStation 5 Proは、ストレージを最大に積んだXbox Series Xよりも安価で、かつ性能は高いが、それでも非常に高額な価格設定であることに変わりはない。
Nintendo Switch 2については、6月の発売以降、値上げは行われていない。しかし、初代Nintendo Switchの発売時の価格が300ドル(約4万6700円)だったのに対し、Nintendo Switch 2は500ドル(約7万7800円)で発売された。もっとも、Nintendo Switch 2は現時点では「史上最速で売れたゲーム機」でもある。
このように、ゲーム機の多くは5年前と比べて50ドル(約7800円)から200ドル(約3万1100円)程度高くなっている。本来であれば、発売から時間が経つにつれて販売価格は下がっていくのが一般的だが、現在は各世代の後半に差しかかっているにもかかわらず、その流れは完全に逆転している。
ゲーム業界の販売が低迷するもう1つの要因は、経済環境である。ほかの多くの商品の価格も上昇しているため、新品のゲーム機は多くの人にとって「今は手を出す必要のないぜいたく品」として映っている可能性が高い。米国では、住宅費や食料品といった生活必需品の価格が急速に上昇しており、最近の世論調査では、米国人の70%が生活費が手に負えないほど上昇していると感じ、現在の経済状況に否定的な見方をしている。
ゲーム機の価格が上昇しているのを考えれば、今回の販売減少は驚くべきことではない。マイクロソフトはサブスクリプションサービスを推進し、「Xbox本体を所有する必要はない」と事実上訴えるような広告展開を行っている。しかし、より大きな視点で見れば、問題の本質は広範な経済状況にあり、この状況が近いうちに変わる可能性は低い。



