エネルギー・通信・交通インフラが中国の技術に支えられ、その命運を一手に握られた状態にある一方、ロシアがインターネット空間を西側諸国から切り離し、ネットの分裂「スプリンターネット」が広がっていく──こうした情勢下で、世界がサイバー・アルマゲドン(最終戦争)の脅威にさらされている、という話なら、もはや耳に新しいものでもない。
だが、中東が直面するサイバー脅威は、はるかに先鋭で最先端を行く。つまりはイスラエル対イランである。世界有数の攻撃的なサイバー国家である両国は、現実世界での戦争に注目が集まるその裏で、静かに、しかし絶え間なく戦い続けているのだ。
イスラエル国家サイバー総局(INCD)の局長であるヨッシー・カラディ退役准将は、先週テルアビブで開催されたサイバー週間の会議での基調講演で、憂慮すべき予言を口にした。それは公の場でかつてなく率直にイランについて語り、強い警戒感を示すものだった。
「ワンクリックで国家は崩壊する」。カラディ局長はこのように警告したと、イスラエルのウェブメディア、Yネットは伝えている。
INCDの発表によると、基調講演の内容は「過去6カ月間にイランがイスラエルに対して展開した攻撃と影響力行使の手法」を明らかにするもの。上記の警告はこれに基づいた発言だ。
カラディは、世界が「初のサイバー戦争」に向かっていると聴衆に語った。それは1発も銃弾が飛び交うことのない戦争であり、「国家がサイバー空間を通じてのみ攻撃され、重要なシステムが機能不全に陥り、『デジタル包囲網』に取り囲まれてしまう恐れがある」という。
「これは架空のシナリオではない。非常に現実的な展開だ」とカラディは警告。「デジタル包囲戦を想像してみてほしい。発電所は稼働を停止し、通信が遮断され、交通機関は麻痺し、水道も汚染された状態と化す」と述べた。



