テクノロジー

2025.12.19 11:45

【開催直前レポート】CES 2026で始まる、AIと産業の新たな戦略

2026年1月6日から9日、米国ラスベガスで開催されるCES 2026。今年は異例の事態が起きている。ソニーとサムスンという二大巨頭が、出展社マップから消えているのだ。

しかし、これはかつて家電見本市だったCESが、AI、量子コンピューティング、そして産業横断的なイノベーションを軸に据えた、技術 × ビジネス実装のカンファレンスへと変容していると捉えると納得できる。

筆者は13年連続でCESを定点観測し、昨年に続き「CES Innovation Awards」の審査員も務めている。その視点から断言できる。CES 2026は、産業横断的な価値創出の場へと進化を遂げようとしている。

「AI Everywhere」「量子コンピューティング」

主催者であるCTA(全米民生技術協会)は、CESを「グローバルブランドがビジネスを成立させ、新たなパートナーと出会う場」と再定義している。公式メッセージ「Innovators Show Up」が象徴するように、意思決定者が集い、議論し、連携を生み出す産業間対話の場へと明確に舵を切った。

この構造の変化は、CESの公式ウェブサイトにも如実に表れている。CES 2026が最も前面に押し出すのは、AI、ビークルテック(モビリティ)、そしてデジタルヘルスの3領域であり、これらが今年のイベントの鍵を握ることは間違いない。

新設「CES Foundry」が描く次世代産業基盤

最も注目すべきは、AI / 量子に特化した新エリア「CES Foundry(ファウンドリー)」の誕生だ。1月7〜8日の2日間限定で、ウエストホール隣のフォンテーヌブローに設置される。
ここは単なる展示スペースではない。AI・量子技術の業界リーダーが集まり、次世代技術を議論し、体感し、濃密なネットワーキングを行う拠点となりそうだ。

圧倒的存在感を放つのがNVIDIAである。メインの「Cobalt Ballroom」を全面占有し、自社が主導するエコシステムのショーケースとする。

量子コンピューティング領域では、世界初の商用量子コンピュータ企業D-Waveをはじめ、光量子で注目のQuantum Computing Inc.、量子体積で世界最高水準を競うQuantinuum、そして、IBM(George P Johnson (on behalf of IBM))の名前も見える。つまり、量子分野のオールスターが集結する。

AIとロボティクスの融合も体感できそうである。Amazonの物流倉庫で話題の二足歩行ロボット「Digit」を開発するAgility Roboticsや、非構造化データをマルチモーダルAIで構造化するCoactive AIなど、次世代産業基盤を支える企業が顔を揃える。

日立、AWS、PwC、タタ・エレクトロニクス、Zebra Technologiesなどグローバル企業も名を連ね、まさに産業の「ファウンドリー(鋳造所)」が生まれる現場となりそうであり注目のエリアだ。

日本のモビリティ基幹企業、CESデビューの意味

今年、CTAが推薦する新規出展企業リストに、日本を代表する自動車サプライヤーの名がある。JATCO(ジヤトコ)だ。

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文=西村真里子

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