変速機技術を「介護・電動モビリティ」へ
自動車の変速機で世界的地位を築いてきたJATCO。今回のCESデビューは、クルマの枠を超えた挑戦の始まりを予感させる。「すべての人の移動を、もっと自由に」をテーマに、モビリティ技術を社会課題の解決へと拡張するとCES初出展を伝えるJATCOウェブに記載されている。
具体的には、電動アシスト自転車向けの2-in-1ドライブユニット、電動バイク向けの2速自動変速機構付きインホイールモーター、そして移乗機構付き車いす「Lifmy(リフミィ)」を展示する。変速機で培った高効率な動力伝達技術と制御技術を、マイクロモビリティとエイジテックへ横展開する戦略だ。
ドイツのGruner AGも同様の動きを見せる。車載インターフェースのDXとEV化を牽引するため、触覚フィードバックと力覚センシングを組み合わせた「HSAアクチュエーター」や、EV 800Vアーキテクチャ対応の高電圧リレーを公開するとGrunerのLinkedInに紹介されている。
こうした企業がCESに出展する意味は明確だ。自動車産業が内燃機関中心の構造から、電動化とソフトウェア主導の時代へ移行する中で、技術の価値を再定義しようとしている。JATCOやGrunerは、「部品」ではなく「技術と機能」を軸に、次の成長領域を世界に示そうとしている。

$8.3$ 兆ドル経済圏:エイジテック市場の熱視線
デジタルヘルスで特に注目すべきは、ベネチアンエキスポ2階のAARP(全米退職者協会)エリアだ。エイジテック関連企業を複数束ねて展示するAARPは昨年のCES 2025でも大きな話題を呼んだ。パナソニックの基調講演に登壇したAARPのCEO Dr. Myetchia Minter-Jordanは、「エイジテック市場は2030年までに13兆ドル規模に達する」と語った。この巨大な市場ポテンシャルは、その後も具体的なデータで裏付けられている。
現在、米国の50歳以上の人々が生み出す経済活動規模は年間 $8.3$ 兆ドルに上り、この規模は2050年までに $28.2$ 兆ドルにまで成長すると予測されている(引用:AgeTech Collaborative)。これは、エイジテック領域が、収益性の高い巨大な経済圏であることを示している。今年もAARPは30近くの企業を集めており、サムスンヘルスケア、TOTO、世界最大手メガネブランドのエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica) など、グローバル企業がAARPエリアに出展を予定している。
スタイリッシュに進化するシニア向けプロダクトで私が最も楽しみにしているのが、GoogleX発のウェアラブルロボティクス「MO/GO」だ。歩行サポートギアでありながら、カナダの最高峰アウトドアブランド、アークテリクス(Arc’teryx)と組み、従来のシニア向け製品のイメージを完全に覆すスタイリッシュなデザインが話題の企業だ。CES 2026では、この提携が生み出す新たなプロダクトラインや進化の方向性が示されることは確実である。
他にも、歩行解析ウェアラブルインソールのスニーカーメーカーCodense、1835年創業の家具ブランドでありながら2021年よりシニアリビング家具で高収益を上げるSamuelson Furniture、香りの力で睡眠改善を図るAppscent Media など、興味深い企業が並ぶ。日本のシニア向けプロダクトは機能性重視で地味なものが多い。しかし、海外ブランドは「かっこよさ」「快適さ」を前面に出し、スタイリッシュに打ち出している。収益性の高いシニア市場を意識したブランド構築を行っているのだ。このプロダクトデザインとブランディング戦略をAARP出展企業から学ぶこともできるだろう。


