その象徴的な活動が、2025年8月に主催したバスケットボールキャンプ「BLACK SAMURAI 2025」である。その中の「THE CAMP」では日本全国から選ばれた中高生を名古屋に招待。メインコーチを、元ロサンゼルス・レイカーズのアシスタントコーチ(AC)で、レブロン・ジェームズを長年指導したNBA屈指の名コーチであるフィル・ハンディが務めた。その一環で開かれた「PHIL HANDY MASTER CLASS」では、次世代選手への指導のみならず、日本の指導者層へコーチング理論を伝えるプログラムも提供された。「THE SHOWCASE」も含め、延べ1万人以上もの観衆が集結したこのプロジェクトは「教室」の域を脱した、エンターテインメント性と教育を融合させた大規模なビジネスモデルを確立してみせたのである。
また、八村はBLACK SAMURAIブランドを通じて自身がプロデュースしたワインの展開も行っている。米ナパ・バレーの名門醸造所ファー・ニエンテが設立した「ニッケル&ニッケル」のワインメーカー、ジョー・ハーデンと手掛けた一本は、SVJPのガラ・パーティーでも振る舞われ好評を博した。
取り組みは太平洋をまたいで地元の日本酒へと広がっている。2025年12月には地元・富山県の桝田酒造店と提携し、「BLACK SAMURAI SAKE(ブラックサムライ・サケ)」のプロデュースを発表。八村は「富山の美しさを世界中の人々と分かち合いたい。故郷で長い歴史をもつ蔵元と共に歩むことを決めた」とその想いを明かした(編集部註:2025年12月19日より販売開始。米国限定のゴールド、日本限定のレッドの2エディション展開)。

こうした活動を通じ、自身のマインドセットを次世代に継承しながら、スポンサーを巻き込みコミュニティを活性化させる仕組みを構築している八村。受賞スピーチの中で、彼は日米間の経済的・文化的交流を牽引するフロントランナーになりたいと、次のように決意を語っている。
「スポーツとビジネスには素晴らしい親和性があります。私たちは人々をつなぐことができる。日本とアメリカで、私がその象徴となり、架け橋になりたい――。そう願っています」


