北野:農地の自由化という話だと、現実の議論は込み入りがちで、一歩踏み出すのはなかなか大変に思えます。
内藤:そうですね。しかしながら、未来永劫に有効な仕組みはなかったわけで、江戸幕府でさえも倒れて新しい時代が来ました。自分自身は日本の農業も、新撰組も大好きですからジレンマを感じますが、新陳代謝があることで日本が回ると思うのです。
ただし、自由化の結果として「すべての農地を海外の資本家に取られてしまいました」という状況になれば目も当てられませんので、上手にやる必要があります。
時代の変わり目にある産業に注目を
北野:農業は時間軸の長い産業です。内藤さんは、やはり農業経営を死ぬまでされたいと思っていますか?
内藤:そう考えています、農業は定年なく続けられるビジネスですから。これから抹茶の事業も大きく育てたいし、海外生産もやりたい。おそらく新規事業は尽きることがありません。
北野:農業以外に就いているビジネスパーソンの読者に対して、農業経営の立場から伝えることはありますか。
内藤:今は米騒動もあって農家が大変だと思われているし、まだ機が熟しきっていない十数年前に農業へ参入を試みて手痛い思いをした企業などもあると思います。でも、これから絶対にチャンスが来ると伝えたいです。
東京の人はどうしても農業が他人ごとのように感じてしまうでしょう。地方が主役になると思われていて、実際にもそうなのですが、そのときに東京の企業や資本家が果たせる役割が必ずあると思います。時代の変わり目にある農業にかかわる仕事ができる、それはとても楽しいことのはずです。

内藤祥平◎1992年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部在学中に米国・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校農業経営学部に留学。その後、鹿児島とブラジルで農業法人の修業を経験。大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社で農業関連企業の経営戦略の立案・実行などの業務に従事。2016年に日本農業を設立し、代表取締役CEOに就任。本誌アワード「日本から世界を変える30歳未満30人『30 UNDER 30 JAPAN 2021』フード部門」に選出。農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」委員。


