北野:日本の農業の生産性が低い理由は、国土が狭くて大規模農業が成り立たないからだとされがちですが、実際はどうですか?
内藤:国が高度経済成長期に「どの業界に注力するか」という濃淡を付けたことにさかのぼります。自動車産業や製造業に比べて、日本の農業には政府のリソースがあまり投下されなかった。そこで日本の農産業が採った戦略は「生産性を上げて産業を伸ばすと単価が落ちてしまうから、みんなで生産性を上げないように供給制限しよう」という策でした。
北野:まさに、今年起きた「令和の米騒動」につながる減反政策が代表ですね。
内藤:その時代においては適正な政策だったはずです。実際、数年から十数年くらいのショートスパンで見ると理にかなっています。決められた単価があれば、みんなが最初はもうかりますから。
ただ、それをずっと続けていると生産性が上がりません。別に農作物をつくっているのは日本だけではないので、消費者は海外の商品を選べます。すると徐々に国内の需要が減っていき、供給制限をしているから単価も上がる。それなのに生産原価も上がっているから、農家は全然もうからない。
北野:そうしたループが慢性的にあったのですね。

生産性を上げるための議論が必要
内藤:僕は日本が大好きだし、自分でも日本の農業がやりたいです。でも、みんなで生産性をある程度低く抑えながら、小さい人たちでまとまって、ベースラインに沿った単価を維持しつつ、なんとか回していく仕組みは、もう持続可能ではなくなっています。
大規模に成長したい、生産性を上げたいという人により多くのお金や人材、農地といったリソースが集まり、彼らが成長することが、この業界にとってすごく重要だと思います。
北野:もしも内藤さんが「政策や法律をなんでもひとつ変えていいですよ」と言われたら、何を変えたいですか?
内藤:これまでも徐々に進んできましたが、農地の売買をさらに緩和させることでしょうか。自分たちでも農業をやっているので、農地を投機的に扱われたら直感的には腹が立つし、嫌だと言いたいところです。でも、市場原理によって農地に正しい値段が付いていけば、流動性が高まります。売り買いによって価値が生まれたら、売りたいと考えている人は農地を売りに出せるし、お金を集めた人が買いに入れる。その結果、集約性の効果で農業の生産性が上がります。
北野:買う人が現れて土地をいっぱい束ねると、農業がスケールされていくのですね。
内藤:実際、国内の水田が平均15ヘクタールくらいに集約できれば、理論上は海外のコメにある程度は善戦できるようです。


