北野:原因は何だったんですか?
内藤:自分たちで、あれもこれもやり過ぎたことです。リンゴの場合、まず生産。その後は大小に仕分けて梱包する選果の作業。そして販売やマーケティング。すべてを自前でやっていました。
スタートアップ経営の鉄則はひとつのファンクション、あるいはワンマーケットやワンプロダクトにフォーカスして抜きん出ることですが、いわばそれと真逆になっていました。
北野:生産、製造、販売のどれにも集中できていなかった。
内藤:いずれも素人の状態ですから、この業界を知っている人なら出ないようなミスが出てしまい、商品が出戻りになったこともあります。せっかくピカピカのキャリアの人たちが会社に集まってくれたのに全然うまくいかない。「自分たちがやろうとしていたことは間違っているのではないか?」と落ち込みました。
北野:それでも、ぶち当たった壁をブレイクスルーできました。なぜですか。
内藤:当たり前の「選択と集中」をしたからです。バリューチェーンのどこにフォーカスするか。それまで海外のマーケティングやB to C販売に自社でリソースを割いていた仕事を、信頼できる現地の会社を見つけて任せました。代わりに川上のオペレーションの質を上げることに集中したら、ビジネスのアイデアも次々と浮かんで成長へのアクセルが踏めたという流れです。
なぜ、日本の農業はもうからない?
北野:新卒でコンサルに入社する前、大学生のときにアメリカへ留学して農業を学ばれたのですね。
内藤:これは原体験として大きかったです。まず、日本の農作物はとてもおいしいとあらためて感じました。日本の農家は「おいしさ」という大きな価値をつくっているのだから、それに見合った対価を得ていいはずです。でも、現実にもうけているのは、それほどおいしくない農作物をつくっているアメリカの農家でした。それは彼らが農業をスケールさせているから。逆に、日本の農業にこれから大きなチャンスがあると気づきました。
北野:日本の外へ行ったからこそ可能性が見えた。
内藤:おいしさと品質を維持したまま、効率と生産性を上げて、みんなの利ザヤを大きくし、なおかつ最終売価も下げることができれば、日本の農業はかなり大きなマーケットを取れるはずです。
農業は苦しいものでも難しいものでもなく、天候リスクを考慮したり、時間軸が長かったりする特性がほかの業界と違うだけで、自動車産業や製造業と同じようなビジネスのひとつです。



