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2025.12.26 09:15

ChatGPTの限界を突破するRAGとは。社内データをAIの資産に変える

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ビジネスシーンにおいて生成AIの話題が尽きることはない。しかし、ChatGPTなどを単なる「高性能な検索エンジン」や「下書き作成ツール」として使う段階は、すでに終わりを迎えつつある。いま、多くの企業が直面しているのは、生成AIに「自社独自のデータ」を学習させ、実務に即した回答を得るための仕組みづくりだ。

その解決策として注目されているのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)」である。従来の生成AIは、インターネット上の膨大な情報を学習しているものの、各企業の内部規定や最新の製品仕様、過去の議事録といった「社外に出ていない情報」については答えることができない。無理に答えようとすれば、もっともらしい嘘をつく「ハルシネーション(幻覚)」を引き起こすリスクもある。

RAGは、生成AIに外部の信頼できるデータソースを組み合わせる技術だ。ユーザーの質問に対し、まず社内のドキュメント群から関連情報を検索し、その内容をAIにインプットした上で回答を生成させる。これにより、AIは「社内情報に基づいた正確な回答」が可能になるのである。

ENSOUが実施した「RAGの認知・導入実態に関する調査」によると、企業の生成AI担当者や経営層におけるRAGの認知度は34.8%と、約3社に1社に達している。

しかし、実際の導入状況に目を向けると、17.8%にとどまる。認知は広がりつつあるものの、実務への組み込みという高いハードルを前に、多くの企業が足踏みしている現状が浮き彫りとなった。

生成AIの活用において、日本企業は世界に比べて慎重な姿勢が目立つ。その背景には、データ基盤の不足や運用ルールの未整備、さらには「AIに対する漠然とした不安」がある。

しかし、人手不足が深刻化する中で、一人ひとりの生産性向上はもはや待ったなしの課題だ。RAGのような技術を活用し、社内に眠る膨大なナレッジを「いつでもAIが答えてくれる資産」に変えることは、単なる業務効率化を超えた競争力の源泉となる。

約56%の企業がチームで使える環境があればAIを活用したいと回答しており、日本企業が現状を打破するために必要なのは、完璧なガバナンスを待つことではなく、まずは特定の部署や業務で「小さな成功事例」を積み上げることだ。社内データを活用したAIを構築・運用できる環境を整えることが、今後の企業のAI活用を大きく前進させる鍵となることは間違いない。

出典:ENSOU「RAGの認知・導入実態に関する調査」より

文=飯島範久

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