経営・戦略

2025.12.31 13:30

デジタルグリッド豊田祐介、逆境乗り越え挑む「エネルギーの民主化」

豊田祐介|デジタルグリッド 代表取締役社長CEO

豊田祐介|デジタルグリッド 代表取締役社長CEO

2025年10月25日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。

電力を直接売買できるプラットフォームを運営する、東京大学発のスタートアップがIPO市場をにぎわせている。「エネルギーの民主化を通じて世の中をアップデートしたい」と語るCEOの経営戦略とは。


株式市場の一寸先は闇だ。何が起こるかわからない。 

デジタルグリッドに取材を依頼したのは2025年8月中旬のこと。この時点では、同社の時価総額は25年上半期に東証グロース市場にIPO(新規株式公開)した企業のなかでナンバーワンだった。

だが、9月11日に発表した26年7月期の2桁減益予想を受けて株価は急落。9月11日の終値で1万120円だった株価は5日間で半値近くにまで値下がりした。 

「今期の事業計画が株主の皆様の期待に添えていないものだと真摯に受け止めています」。株価の急落についてコメントを求めると、豊田祐介は冷静にこう言葉を紡いだのち、「ただ」と続けた。

「我々の挑戦は始まったばかりです。今回発表した中期経営計画を実現し、エネルギーの世界のアップデートをけん引する存在となるべくまい進します」。そう語る豊田からは、ミッション達成に向けた揺るぎない覚悟と決意を感じた。

デジタルグリッドは17年に設立した、東京大学発のスタートアップだ。AI(人工知能)を活用し、データとアルゴリズムで電気系統全体の最適化を支えながら電力の売り手と買い手が直接売買できるプラットフォームを運営している。25年7月末時点で3400以上の「電力需要家」と、再生可能エネルギーを含む1400以上の「電力発電家」をつないでいる。
 
24年には蓄電池市場にも参入した。25年9月に発表した中期経営計画では、今後3年間で系統用蓄電池事業に100億円を投じ、デジタルグリッドの成長の柱に育て上げるとしている。 

「蓄電池事業は開発項目が多岐にわたるので、スピード感をもってエンジニアリングできるかどうかが勝敗を左右します。幸いにも、当社には優秀なエンジニアがいて、通信用のデバイスを手がけた経験やノウハウもある。蓄電池の分野でスタートダッシュを切れる体制が整っています」 

豊田を含め、デジタルグリッドにはゴールドマン・サックスやJPモルガンなど投資銀行出身者が多数在籍している。蓄電池の運用においては、投資銀行でエネルギー分野を手がけてきたメンバーが中心となって収益の最大化に取り組む。

「数年以内に国内市場で結果を出し、その先には海外展開も視野に入れたいと考えています」

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文=瀬戸久美子 写真=若原瑞昌

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