4人家族なら必要額に5倍以上の差が
家族で移住となると、その差はかなり大きくなる。あまり報じられていないが、今回のトランプ・ゴールドカードの1万5000ドル+100万ドルというのは、永住資格の販売価格であり、もし配偶者と子ども2人の4人家族なら、4人分購入する必要がある。つまり406万ドル(約6億2936万円)もかかるのだ。
それに対しEB‐5は、投資によって「永住権申請の資格を得る」ということなので、投資後は移民局での通常の永住権申請と同じルートを辿る。そうなると、申請者が永住資格を得たと同時に、配偶者と21歳未満の子どもにも永住資格が与えられることになる。
さらにEB‐5にはメリットがある。EB‐5申請を多く手がける「AOMビザコンサルティング」の足利弥生代表は次のように説明する。
「トランプ・ゴールドカードは、米国政府に1枚100万ドルの寄付をするようなものです。対して、EB‐5はあくまで投資ですので、リターンも期待できます。弊社でEB‐5申請をした場合、80万ドルを投資すると、80万ドルがそのまま返ってくるケースもあります」
トランプ・ゴールドカードは「いかなる場合でも返金はなし」という条件になっているので、リターンが期待できるのなら、さらに負担額の差は広がることになる。
また、米国外の富裕層を対象にしているトランプ・ゴールドガードは、米国内からの申請は禁止されているが、EB‐5は米国内に居住していても申請できる。なので、これにまつわるメリットもある。
「2022年3月の法改正により米国内に居住する人がEB5を申請する場合、I-485という米国内でのステイタス変更申請(AOS=Adjustment of Status)が同時にできます。そうすると、EB‐5の審査中にI-485によって米国内での就労資格や出入国が可能になる権利を得られます。EB‐5の審査には2年以上を要しますが、I-485は3カ月から6カ月で承認されることが多いからです」(足利代表)
もう1つの大きなメリットは学生の授業料だ。足利代表は次のようにも語る。
「米国の州立大学や公立校は米国在住者と留学生の学費に大きな差をつけています。もし学生ビザで留学している日本人が、米国内でEB‐5を申請し、I-485によるステイタスの変更をした場合、州や学校によってはアメリカ国籍や永住者と同等の居住者として認定され、授業料が安価になることがあります。カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州、フロリダ州など20州以上がこの法律を取り入れています」
すでに米国に滞在している場合、トランプ・ゴールドカードの申請は不可能だが、EB‐5なら可能。永住資格の審査中でもI-485の申請を進めれば、以上のメリットを享受できることになる。EB‐5申請には、学歴や英語力、過去のビジネス経験、年齢などは一切問われない。
EB‐5プログラムは、2027年9月30日まで有効の時限法となっており、現行法での申請受付は2026年9月30日まで。トランプ・ゴールドカードが具体的にどれくらいの期間で取得できるかは明らかではないが(公式サイトでは手続きは「数週間」と書かれている)、これから9カ月間、米国永住権界隈の人々にとって、「寄付」のゴールドカードか、「投資」のEB‐5か、どちらにするか頭を悩ませることになりそうだ。


