経済・社会

2025.12.19 16:15

「トランプ・ゴールドカード」開始の裏で注目が集まる、もう1つの永住権プログラム

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

再注目された投資家向けの「EB‐5」プログラム

所得への税金を気にする富裕層は別として、昨今、盛り上がる英語圏への「教育移住」ブームもあり、米国への移住を目指す日本人にとって永住権取得は「夢」の1つだった。

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ただ、「どうやって取得するのか」という部分に関してはさまざまなルートがあり、ひと口で説明できない側面があった。就労ビザなど主に雇用を目的とした米国滞在ビザ(非移民ビザ)をもとに移民局に申請する方法や、米国人と結婚することで家族というカテゴリーで永住権を得る方法が主流ではあった。

ただ、いずれにしても移民法専門の弁護士への依頼が必要で、かつ費用は弁護士によって千差万別。取得までの期間も移民局の人員問題や米国側の事情、またタイミングだけでなく申請者の経歴など個人の事情でも大きく変動し、「5年以上待っている」というケースもあった。

ほかにも年に1度のロッタリー(抽選)制度が設定されているが、年間5万5000件の当選が公表されているものの、実際に何人が当選しているかは定かではない。

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ロッタリーは「米国への移民が少ない国に永住権を提供して、移民の多様性を高めることが目的」なので、日本人だけでなく世界各国の人たちが対象だ。ただ、ハワイは抽選に当選した日本人が移住しやすい場所であるためか、ハワイに暮らしていると永住権ロッタリーの当選者によく出会う。確実に当選者はいるということだ。

トランプ・ゴールドカードは、そんな永住権申請に明確な値段をつけ、さらに取得手続きの迅速さを謳っている点で、斬新な取り組みと言える。今年6月にウェブサイトが開設された際には7万人以上が事前登録したというから、その全員が申請をすれば、単純に700億ドル(約11兆円)の歳入が米国政府にもたらされることになる。

最近流行りの言い回しにしたがって、仮に米国永住権を狙う人々を「米国永住権界隈」と呼ぶとすれば、そんな界隈の人々の間で、いまもう1つの永住権取得手段が話題になっている。

「EB‐5」(イー・ビー・ファイブ)というプログラムだ。これは米国に80万ドル(約1億2400万円)以上の投資をし、米国内で一定の雇用を創出するなどの条件を満たせば永住権が取得できる制度だ。

トランプ・ゴールドカードを発表した際に、「既存の投資家向けビザ制度「EB‐5」を廃止し、代替するものとしてトランプ・ゴールドカードを導入する」と表明して大きく報道されたため、「EB‐5って何だっけ?」と逆に注目を集めることになった。

EB‐5での永住権取得は、多くの場合リージョナルセンターと呼ばれる米国内の指定民間企業が運営する事業へ投資することで永住権申請の資格を得る。投資なので、もちろん一定のリスクも存在する。

ただ、どのリージョナルセンターへ投資したらいいか斡旋するコンサルティング会社もあり、一般的には「投資を回収できるケースが多い」とされる。最近では事業開発の際に資金調達の一部としてEB‐5を「融資」として募り、5年から7年後に「返済」するパターンもあるそうだ。

EB‐5投資から現状では2年ほどで、2年間有効の条件付き永住権を取得し(この時点で米国内での就労や居住などが可能になる)、それから2年後に投資の状況や雇用の維持などの審査を経て、正式な永住権が取得できる。この時点で投資金が戻ってくるパターンが多いようだ。

さて、何よりその界隈の人々を惑わしているのが、このEB‐5だとトランプ・ゴールドカードよりかなり安く永住権が手に入るという事実だ。手に入るものが同じなら、安いほうがいい。

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文=岩瀬英介

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