筆者としては、ユニットを構成する40%の金はグラム数という「量」で固定することを提案したい。たとえば1ユニットが100ミリグラムの金と60%の法定通貨で構成されるとすれば、その「100ミリグラム」という金の量そのものを変えないようにする。これは、金の価値の「比率」を常に40%に保つ方式とは異なる。その方式では、時間の経過とともに金の含有量が徐々に減っていく可能性があるからだ。対して金の量を不変にしておけば、60%を占める法定通貨部分がいずれ価値を失って(あるいはそれに近い状態になって)も、1ユニットあたり100ミリグラムの金は残る。その場合、ユニットは事実上100%金本位の通貨となり、混乱や難しい意思決定を経ず自然な進化の道をたどることになる。
その過程で、ユニットのうち法定通貨で構成される60%の部分が何年かかけて価値を失っていくと、ユニットの価値は当然、金に対して60%下落することになる。これは多少居心地の悪い状況ではあるものの、その「何年かかけて減価していく」事態が引き起こすであろう世界的な通貨混乱のただなかでは、実際にはたいして問題にならないだろう。
当面のあいだ、ユニットは中ロなど参加国の法定通貨との為替レートの変動がなり小さく抑えられるので、導入しやすく、日常的な経済活動に与える混乱も少なく済みそうだ。これは、過去数十年にわたり中国で成果を上げてきた「暗闇のなかで手探りしながら進む」式の戦略でもある。中国ではこれを「石に触れながら川を渡る(摸着石頭過河)」と言う。
要するに、まず何からの仕組みを立ち上げて運用してみる時期に来ていると思う。そこから学び、試行錯誤しながら改良していけばいい。BRICS諸国が新たな仕組みに慣れていけば、それは完全な国際金本位制に向けて、危険な跳躍ではなく小さな一歩になるだろう。繰り返せば、完全な金本位制は過去には非常にうまく機能していたし、また将来もうまく機能するはずだ。


