詐欺被害を防ぐための心得
被害を嘆くだけで終わらせる選択肢もあったが、ラリーとバーバラはそうしなかった。「自分にはまだできることがある」と考えたラリーが、教会の集まりで自身の体験を語ったところ、同様の詐欺被害に遭った人々が次々と声をかけてきた。その多さに、彼自身も驚いたという。
こうした被害が高齢者に集中していることは、FTCのデータからも明らかだ。2024年、企業や政府機関を装った詐欺で1万ドル以上(約156万円以上)の被害を申告した人に占める高齢者の割合は、他の年代の2倍以上に達した。被害額が10万ドルを超えるケースでは、その差はさらに広がり、高齢者からの報告は約3倍に上っている。
ラリーのケースは、その典型例と言える。2024年に、企業や政府機関を装った詐欺で1万ドル以上の損失を報告した高齢者のうち、41%が「最初の接触は電話だった」と答えている。これに対し、オンライン広告やポップアップがきっかけだったとする人は15%、電子メールが入り口だったという人は13%だった。
また、支払い手段については、被害者の33%が暗号資産を使ったと回答し、次いで銀行振込(20%)、現金(16%)が続いた。暗号資産を支払いに使ったと答えた人の多くは、ビットコインATMを利用していた。
さらに金は、FTCの被害申告フォームの選択肢には含まれていないが、損失額が1万ドルを超える報告のおよそ5%、10万ドルを超えるケースでは約21%で、支払い方法として金が記載されるか、申告の中で言及されていた。
では、こうした詐欺から身を守るにはどうすればいいのか。FTCは、いくつかの対策を取るよう呼びかけている。
・突然の連絡に対して、個人情報や金融情報を提供しない。
正規の組織が、社会保障番号、銀行口座番号、暗証番号(PIN)といった情報を、電話やメール、SMSで突然求めることはない。取引のある企業を名乗るメールやSMSを受け取り、本物だと思えても、記載されたリンクはクリックしないこと。公式サイトに直接アクセスするか、正式な電話番号に自分でかけ直すべきだ。相手が伝えてきた番号や、着信表示に出た番号には決して電話しない。・「今すぐ対応しろ」という圧力に屈しない。
正規の企業は、判断するための時間を与える。支払いや個人情報の提供を急かす相手は、詐欺だと考えるべきだ。・支払い方法を細かく指定してくる相手を信用しない。
暗号資産や特定の送金サービス、決済アプリ、ギフトカードでしか支払えないと言い張る相手の要求に絶対に従わない。また、相手から渡された小切手を入金し、その一部を送り返すよう求められるケースも詐欺だ。・一度対応を考慮し、信頼できる人に相談する。
何か行動を起こす前に、友人、家族、近所の人などに事情を話すこと。誰かに話すことで、詐欺だと気づける場合がある。・被害に遭った、または詐欺を見かけた場合は、当局に通報する。
FTCは、詐欺被害や疑わしい事例について、専用の窓口で報告を受け付けている。


