論文によれば、ティタノボアが生きた時代のコロンビアは、1日の平均気温が摂氏30~34度だったと推定される。現代の熱帯よりもはるかに高い数値だ。言ってみればティタノボアは、暁新世(約6600万~約5600万年前)の世界の温度を推定する、「生きた温度計」になったのだ。
爬虫類が支配する世界の頂点にいたヘビ
生態学的に、ティタノボアは食物連鎖の頂点に位置していた。恐竜が世界から消えた一方、哺乳類はまだ小型で、ほとんどの種は齧歯類のような姿をしており、概して体重は5kgに満たなかった。つまり、ティタノボアの競合相手、そして獲物はほかの爬虫類だった。
セレホン層から発見された化石は、暁新世の生態系に巨大爬虫類がひしめいていたことを物語る。例えば、2012年に学術誌『Journal of Systematic Palaeontology』に掲載された論文は、甲羅の幅が1.5mを超えるカメ(学名:Carbonemys cofrinii)の発見を報告している。同じように、2011年に学術誌『Paleontology』に掲載された論文では、推定全長6mという、ワニに似た爬虫類アケロンティスクス・グアヒラエンシス(学名:Acherontisuchus guajiraensis)が記載された。
ティタノボアはおそらく隠密行動とすさまじい締め付けの力を武器にして、こうした動物を水中で襲い捕食したのだろう。しかしティタノボアは、現代のニシキヘビやボアと異なり、俊敏な攻撃はできなかったと考えられる。並外れたサイズのせいで、一瞬のうちに飛びかかるような動作は困難だったはずだ。
むしろティタノボアは、スーパーサイズのアナコンダのように行動したのだろうと、研究者たちは考えている。つまり、川の水面の下に潜み、獲物を奇襲して、胴体で絞め殺したのだ。巨体のおかげで、ティタノボアは1平方cmあたり30kg近い力をかけることができ、大型爬虫類の胸郭をへし折るのも朝飯前だった。


