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2025.12.18 15:00

元AMD幹部、創業したAIチップメーカーの株価が上海上場初日に急騰し億万長者に

Ying Tang/NurPhoto(Getty Images)

Ying Tang/NurPhoto(Getty Images)

中国が半導体の自給自足を推し進める中、AIチップメーカーのMetaX Integrated Circuitsの株価が水曜日、上海での取引初日に693%急騰し、中国内でこの2週間で2人目の億万長者が誕生した。創業者のチェン・ウェイリャンは資産65億ドル(約1兆円。1ドル=155円換算)となり、「スリー・カンマ・クラブ」(資産10億ドル[約1555億円]超の億万長者)の仲間入りを果たした。

49歳の会長でCEOのチェンの資産は、上海に本社を置く同社の持ち株に依っている。同社の時価総額はForbesの推計によれば、現在3200億元(約7兆円。1元=22円換算)超に達している。

MetaXはIPO(新規株式公開)で、1株104.7元(約2303円)で4010万株を売り出し、42億元(約924億円)を調達した。目論見書によれば、調達資金の大半を研究開発に充てる計画である。MetaXは、電子メールでのコメント要請に回答しなかった。

同社の華々しい上場初日は、株式への需要が急増する中で実現した。IPOの個人向け募集枠は約3000倍の超過応募となった。IPO前には、HSG(HongShan Capital Group、旧Sequoia China)、Primavera Capital Group、ZhenFundなどの投資会社から資金を調達していた。

投資家は、エヌビディアに対抗する国内企業として台頭し得る会社の株式を求めて殺到している。先端半導体の対中販売を制限する米国との激しい対立のさなか、北京は地場の有力企業を育てる必要性を繰り返し強調してきた。わずか2週間前には、MetaXの競合であるMoore Threads Technologyが、同じく上海での市場デビューを果たし、3人の億万長者を生み出した

MetaXは、上海上場のCambricon Technologiesなど国内チップ企業との競争にも直面している。Forbesの「リアルタイム・ビリオネア・リスト」によれば、Cambriconの共同創業者で40歳のチェン・ティエンシーは、純資産218億ドル(約3.4兆円)で中国12番目の富豪となった。競争に先んじるため、同社は目論見書で研究費の大幅な支出を見込むとしており、継続的な高コストと、長期にわたる財務上の損失が続く可能性があると潜在的な投資家に警告している。

「国内のGPUメーカーは出遅れており、技術のブレークスルーと製品開発はいまだ初期段階にある」とMetaXは目論見書に記した。「多くの領域でなお改善が必要で、研究、マーケティング、エコシステム全体の構築にリソースを要する」。

それでも同社は顧客を獲得している。目論見書によれば、売上高ベースの主要顧客には、上海上場の通信会社Super Telecomや、国有系の情報技術企業H3Cが含まれる。2025年の最初の9カ月間に売上高は前年同期比450%超増の12億元(約264億円)に跳ね上がり、損失は55.8%縮小して3億4550万元(約76億円)となった。

創業者のチェンは、半導体ビジネスのベテランだ。米半導体大手AMDで中国において10年以上上級幹部として勤務した後、2020年にMetaXを創業した。名門の清華大学で工学の修士号を取得しているこの実業家は、元AMDの同僚数人も引き入れた。会社の目論見書によれば、CTOのポン・リーとヤン・ジエンはいずれもAMDで10年以上勤務していた。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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