現在発売中のForbes JAPAN 12月24日発売号「2026年総予測 新時代がわかる『100の問い』」特集は、毎年恒例の未来予測号。今年の表紙は、今注目を集めるAIスタートアップ企業のアンソロピック、代表取締役社長のダニエラ・アモディ。そのほか、2025年のノーベル経済学賞受賞者、ジョエル・モキイア米ノースウェスタン大学教授をはじめ、ピーター・ターチン教授、ジョセフ・ヒース教授、ダニエル・ヴァルデンストロム教授など世界的な有識者へのインタビューを掲載。Forbes JAPANの編集による「多様な未来の見方」を提示する。
「5年後、不老不死が実現する」──ノーベル賞級ともいわれる研究成果で知られる科学者の木村建次郎と、大ヒットドラマ「地面師たち」で知られる小説家の新庄耕が、日本の未来について語った。
『地面師たち』の作者である新庄耕が次回作の題材に選んだのは、「天才科学者」ともいわれる木村建次郎だ。木村は、応用数学史上の未解決問題である「波動散乱の逆問題」を世界で初めて解き、その数式を用いてさまざまな物体の内部を透視する技術を開発。その技術を社会実装するために、自らIntegral Geometry Science(IGS)を起業し、医療やエネルギー、インフラ、安全保障をはじめ、あらゆる分野での研究開発や事業化に取り組んでいる。物体の透視技術でさまざまな可能性を提示する木村と、そこに物語としての面白さを見いだす新庄が見通す未来は、どのようなものか。対談で語られたのは、驚くべき未来の姿だった。
──新庄先生は、小説の題材としてなぜ木村先生に興味をもたれたのですか。
新庄耕(以下、新庄):木村先生の話を聞いて、創作意欲に駆られない現代小説家はいないんじゃないですかね。まず「波動散乱の逆問題」を解いたアプローチ方法に驚きましたし、理論を打ち立てるだけでなく、社会実装にも取り組んでいる。もう異次元の人です。
木村先生はお話もうまいし、知らない人に理論や技術を説明する能力も非常に高い。だからご自身のことや研究についてなら、本人が書くのがいちばんいい。そこで考えたのは、ベンチャーキャピタリストである主人公が木村先生をモデルとする科学者と出会い、世界を変えていくというストーリー。ベンチャーキャピタリストの視点を通して木村先生を描けば、物語として大きなうねりがつくれそうだと思いました。
──ベンチャーキャピタリストは未来に投資をする仕事。木村先生は近い未来にどんなことが実現すると思いますか?
木村建次郎(以下、木村):今、不老不死の実験をやっていて。人間に死がなくなる未来が来ます。
新庄:その実験はマウスか何かで?
木村:シミュレーションは成功したので、ちょうど明日、ブタでやろうと思っているところです。
新庄:ブタですか。
木村:はい。日本人の死因で最も多いのはがんだといわれていますが、実はがんそのもので死ぬ人はいません。がんが肺に転移して、空気が吸えなくなって窒息死するか、がんが脳に転移して心臓をコントロールする信号が届かなくなり、心停止状態になって多機能不全で死ぬかのどちらかなんです。
それなら、首から上を独立させて、首から上だけで生きられるようにしてしまえば、肺が動かなくなって窒息死することも、がんが脳に転移することもない。首には、酸素ボンベやフィルター、血液循環システムなどをつなぎ、それらの装置を詰めた小型のランドセルのようなものを背負って生活する。
心筋梗塞による心停止も大きな死因のひとつですが、それもなくなり、人の死因はアルツハイマーだけになる。今はそれをあと5年で商品化できるように、全力で取り組んでいるところです。



