経済

2025.12.18 18:00

ミッキーマウスが「AIの機能」に──ディズニーとOpenAIの提携が示す新時代のブランド戦略

Cheng Xin/Getty Images

Cheng Xin/Getty Images

ミッキーマウスが、AI製品の機能になった。

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数年前なら、この文章は馬鹿げて聞こえただろう。しかし今週、それが現実となった。ディズニーによるOpenAIへの10億ドル(約1570億円)の投資と、数百のキャラクターをOpenAIが開発した動画生成AIプラットフォーム「Sora」にライセンス供与するという決断は、エンターテインメントやメディアの枠を超えた変革を象徴している。

今、ブランドが静かに認知度を失っていく時代に到来しつつある。それはマーケティングへの投資を止めたからではなく、インターネット自体がクローズド化しているからだ。フィードは変化し、クリックは会話へと移行し、AIエージェントが私たちに代わって選択し、発見のプロセスは仲介されるようになっている。

ブランドは排除されつつある。

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そしてディズニーは、最も信頼できる復帰への道筋を示したのだ。

アテンションエコノミーの変化

過去20年間、ブランドの成長はオープンな配信に依存してきた。検索結果、ソーシャルフィード、クリック、ページ、インプレッション。従来のSEO、SEM、ソーシャル、ウェブサイトの最適化には時間がかかった。そうした時代は、私たちが知る形では終わりを迎えている。

AIが主導するインターフェースの世界では、ユーザーはもはやウェブサイト間をクリックして移動しない。検索する代わりに、AIで質問を始める。ブラウジングは会話に置き換わる。ホームページは存在せず、ユーザーの興味関心に強く紐づいたメディアが作成される。さらに、取引はプラットフォーム内で完結し、スクロールも必要ない。

これが閉鎖的なインターネットにおけるアテンションエコノミーの姿だ。誰かが使用しているシステム内にブランドが存在しなければ、その存在はないに等しい。

参加が新たな流通形態に

ディズニーとOpenAIによる提携の妙は、ディズニーが閉鎖的なエコシステムの中で、機能として存在することを選んだ点にある。これは、IP(知的財産)ライセンス契約を超えるものだ。ファンがディズニーコンテンツを生成するのではなく、関連性と共鳴を生み出す。

プロンプトでIPを呼び出せるようになると、ブランドはメッセージとしてではなく、機能として振る舞い始める。人々が実際に使える存在になるのだ。

参加はインフラとして重要だ。人々が行動を起こす環境(AIツール、プラットフォーム、エージェント)内であなたのブランドを使って創作活動をできれば、注目を集めるための戦いは不要になる。すでにそこに存在しているからだ。参加すること自体が、流通につながる。

広がるのはコントロールではなく活用

歴史的に、ブランドはIPを金庫のように扱ってきた。厳重に管理し、保護し、守る。希少性が価値を生み出してきた。

AI主導の文化では、希少性はユーザーとの無関係を生み出す。コントロールはブランドの広がりを制限するが、IPの活用はブランドを広げる。あらゆるインタラクションはユーザーの記憶を強化し、あらゆる創造がユーザーの親しみを深める。そして、認められたあらゆるIPの使用は、ユーザーにとってIP、そしてブランドの意義を強化する。

これがブランドにとっての聖杯だ。露出ではなく、行動を通じてユーザーとの関係性を成長させていく。

ディズニーは、コントロールを手放しているわけではない。管理する部分を移しているのだ。ガードレールは上流へと移動し、データセットやプロンプト、キュレーションなどへと組み込まれる。そうすることで希薄化を避けながら、人々が行動を起こす環境への参加が可能になる。

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