F1は、時速200マイル(約320キロ)を超える世界にふさわしいスピード感で、大胆な刷新を図ろうとしている。2026年のシーズンは、新たなチームの参戦や新レースの追加、そしてマシンの全面刷新が予定されている。
2026年のF1は、マシンの刷新やカレンダーの変更により「5つの転換点」を迎える
2025年のF1シーズンは幕を閉じたが、F1マシンは3月にオーストラリアで開幕する2026年のシーズンで再びサーキットに戻ってくる。
米国のF1ファンは、来季からApple TVのストリーミングでレースを視聴可能になる。アップルは今年10月、8シーズンにわたってF1を放送してきたESPNに代わって、Apple TVを米国での配信先とする5年契約を結んだ。この新契約により、F1は年間平均で従来の約8500万ドル(約133億円。1ドル=157円換算)を大きく上回る約1億4000万ドル((約220億円)の放映権収入を得るとみられている。
ただし、2026年に向けた変化はこれだけにとどまらない。マシンの刷新、レースカレンダーの変更、新チームの参入など、F1は複数の転換点を迎える。以下では、来季に注目すべき5つの主要な変化を紹介する。
(1)キャデラックがF1参戦、来季は11チーム体制へ拡大
10チーム体制が7年連続で続いてきたF1は、キャデラックの参戦により、来季は11チーム体制へと拡大する。
この一連の動きは2023年に始まった。現在はアンドレッティ・グローバルとして知られるレーシンググループが、ゼネラル・モーターズ(GM)のキャデラック・ブランドと組み、F1参戦を申請した。同グループはインディカーや、完全電動のフォーミュラEなど、複数のモータースポーツに参戦している。この申請はF1を統括する国際自動車連盟(FIA)の承認を得たものの、既存F1チームは強く反発した。主な理由は、新規参入チームがF1の事業規模を実質的に拡大しないまま、リーグ全体で分配される収益の取り分を奪うのではないかという懸念だった。
GMが将来のエンジン製造を約束、キャデラックが約707億円の参入金を支払うことで最終承認
その後、アンドレッティ側で経営陣の交代があり、GMが将来的にF1向けエンジンの製造に乗り出すと約束したことで、キャデラックは2025年3月、F1の商業権を管理するフォーミュラ・ワン・グループから最終承認を得た。キャデラックが、他チームへの収益への影響を緩和する目的で、数億ドル(約数百億円)規模にのぼる立ち上げコストとは別に4億5000万ドル(約707億円)の参入金を支払うことに同意したことも、承認への道を開く要因となった。
米国の自動車ブランドの参戦が、F1にとって収益性の高い米国市場でさらなる浸透につながるかどうかは未知数であり、キャデラックが初年度からコース上で競争力を発揮すると見る向きはほとんどない。ただし、チームの初期メンバーには豊富な経験がある。チーム代表のグレーム・ロードンは、2014年に経営破綻する前のマナー・マルシャでスポーティングディレクターを務めていた。また、ドライバーのバルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスは、F1で通算26シーズンにわたって参戦しており、両名とも年間ランキング2位を経験している(ボッタスは2019年と2020年にメルセデスで、ペレスは2023年にレッドブルで2位だった)。
一方、キャデラックの初年度の成績がどうであれ、これ以上の新規参入が続くとは考えにくい。FIAのモハメド・ベン・スライエム会長は、将来的にF1が12チーム体制に拡大する可能性に言及しているが、F1のステファノ・ドメニカリCEOは繰り返しこれに否定的な姿勢を示してきた。彼は最近も、「すでにこれ以上の余地はない。輸送や会場運営といった物流面でも、すでに限界に達している」と語っている。



