欧州連合(EU)は12日、域内にあるロシア中央銀行の資産2100億ユーロ(約38兆円)を、従来の6カ月ごとの更新を必要とする制度に代わり、無期限に凍結することを決定した。
これまで、根本的な問題は手続き上のものだった。制裁は予定通りに更新しなければならず、瀬戸際政策を招いていたのだ。EUの新たな手段は、EU条約第122条に基づいている。これは危機的状況下で、欧州理事会が全会一致の合意を必要とせず、例外的な経済措置を採択することを認めるものだ。実際には第122条は現在、ロシアの国家資産の凍結を、特殊な状況によって正当化される例外的な措置として扱うためのEUの法的手段として機能している。
欧州各国の政府は今後、凍結されたロシアの資金がウクライナをどのように支えられるかを検討することになるだろう。ウクライナ政府の現在の資金が来年4月までに枯渇するとの予測を受け、欧州各国はウクライナの防衛と基本的な国家機能を向こう数年間維持する方策を模索している。EUの今回の動きは、凍結されたロシア資産がウクライナの長期的な資金調達、ひいては復興にどのように役立てられるのかという、より大きな問題に向けた一歩だと見られている。
ユーロクリアの法的問題
ロシアの凍結資産の大部分は、ベルギーの首都ブリュッセルに本拠を置く債券決済機関「ユーロクリア」に保管されている。ベルギーは、ロシアが報復した場合の法的・財政的リスクについて繰り返し懸念を表明している。こうした懸念は現実のものだ。ロシア中央銀行は既に、モスクワの裁判所にユーロクリアを相手取った訴訟を提起すると発表している。実際、ユーロクリアはロシア資産に関連し、同国の裁判所で既に100件以上の法的請求に対処していることを認めている。
その結果、欧州の政策はジレンマに陥っている。資産の凍結は1つの課題だが、連鎖的な法的リスクを引き起こさずに凍結資産を有効な資金調達手段へと転換することは別の課題だ。欧州当局は、資産が担保やウクライナへの融資の根拠となる限り、ロシアが法的所有権を保持したまま、リスクは管理できると主張している。
米国の対応
一方、欧州の手続きは、米国で計画されている内容とは矛盾している。例えば、米国のドナルド・トランプ大統領が発表した28項目の和平案の第14項は、欧州によるロシアの凍結資産の管理を事実上、終わらせるものだった。資金は凍結解除され、欧州の監督下から外され、大半がロシアに返還されることになっていた。トランプ大統領の計画では、約1000億ドル(約16兆円)が米国の管理でウクライナの復興投資に充てられ、将来の純収益は米国とウクライナで均等に分配される仕組みになっていた。これは、ロシアが戦争を終結させ、ウクライナに賠償金を支払うまで影響力を維持しようとしている欧州諸国にとって、受け入れがたい提案だった。
欧州はロシアとの過去の交渉や、同国のウラジーミル・プーチン大統領を支持するトランプ大統領の姿勢などから懐疑的になっている。過去数十年間にわたり、ロシアとの間で数多くの合意が結ばれてきたが、実質的な履行はなかった。これにより、議論は再び核心的な疑問に戻る。どのような安全保障の枠組みが、ロシアによる今後の攻撃を防ぐことができるのか?
選択肢には、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟、連合による防衛保証、長期的な軍事支援の約束、さらにはウクライナの核兵器再配備の提案までが含まれる。結局のところ一体どうすれば、ロシアによるウクライナやその他の地域への侵攻を阻止することができるのだろうか?



