経営・戦略

2025.12.18 11:00

ワーナー経営陣、パラマウントの敵対的買収提案の拒否を株主に要請 ネトフリ株は時間外取引で上昇

Mario Tama/Getty Images

Mario Tama/Getty Images

映画『ハリー・ポッター』『ダークナイト』シリーズを擁する米メディア大手、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の行方を巡り、事態が混迷を深めている。事の発端は12月初め、WBDが動画配信最大手ネットフリックスと、スタジオおよび配信事業を統合する「合併契約」で合意したことだ。これに対し、同業のパラマウント陣営が待ったをかけ、WBD全体の買収を提案する敵対的行動に出た。対立が続く中、WBDは米国時間12月17日、パラマウント案を「不十分」として正式に拒否。あくまでネットフリックスとの統合を進める方針を株主に訴えた。かつての名門スタジオの命運を賭けた歴史的な再編劇は、政治的思惑も絡み合い、注視されている。

WBD、パラマウントによる敵対的買収提案を拒否するよう株主に呼びかけ

ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)は、パラマウントが支援する1080億ドル(約16.7兆円。1ドル=155円換算)規模の敵対的買収提案を拒否するよう株主に求め、同社のスタジオ部門およびストリーミング事業を取得するネットフリックスの提案の方が優れていると主張した。

ネットフリックス案への支持を表明

複数のメディアが報じたところによれば、WBDは株主宛ての書簡で、デービット・エリソン率いるパラマウントの敵対的提案は、同社の1株あたりの価値を30ドルと評価するものだが、スタジオおよびストリーミング事業を1株あたり27.75ドルと評価するネットフリックスの提案より「劣っている」と述べたという。

3ページにわたる書簡の中で、WBDのサミュエル・ディピアッツァ会長は、取締役会がパラマウントによる最新提案を再検討した結果、「依然としてネットフリックスとの合併案に劣る」と結論づけたと説明した。

同書簡はさらに、パラマウントの提案は「不十分な価値しか提供せず、WBDに対して数多くの重大なリスクとコストを課すものだ」と付け加えた。

ディピアッツァは、パラマウント案の前提にはエリソン家による約406億5000万ドル(約6.3兆円)規模の資金拠出が含まれているものの、それに関して「エリソン家によるいかなるコミットメントも存在しない」と指摘した。

これらの主張の一部は、WBDが米証券取引委員会(SEC)に提出した書類でも繰り返されており、取締役会は全会一致で、パラマウントの提案は「WBDおよびその株主の最善の利益にかなわない」と結論づけたとしている。

収提案の拒否を受け各社株価は下落、ネットフリックスの株価のみ上昇

米国時間12月17日早朝の時間外取引では、パラマウント・スカイダンスの株価は1.8%安の13.60ドル、WBD株も1.59%安の28.44ドルとなった。一方、ネットフリックス株は1.66%高の96.14ドルをつけている。

トランプの娘婿クシュナーが関与する投資会社、注目が集まることを嫌気して支援から撤退

ブルームバーグは16日夜、ジャレッド・クシュナーの投資会社アフィニティ・パートナーズが、パラマウントの敵対的買収案への支援から撤退したと報じた。同報道によると、同社が支援を引き揚げた背景には、ドナルド・トランプ大統領の娘婿であるクシュナーが関与していることにより、この取引が「歓迎されない注目」を集めたことがあるという。

アフィニティはブルームバーグに対し、「このユニークな米国の財産の将来について、2つの強力な企業同士が争う状況の中、アフィニティはこの機会を追求しないことを決定した」と述べた。

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翻訳=江津拓哉

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