ユーザーが他社のOSを搭載する端末へ乗り換える際、データ移行が簡単にできるように、グーグルは2011年から「Google Takeout」というサービスを提供してきた。Google Takeoutは日本国内でも「Googleデータエクスポート」として、GmailやGoogleフォトをはじめとする80以上のサービスにより提供されている。ユーザーが端末を買い換えた際などに、各アプリのデータを手間なく引っ越せる。このような実績にも触れながら、デイ氏は「新法が求める相互運用性の確保は、グーグルではもう実質的に達成されている」との認識を示した。
外部課金システムをめぐる手数料と実効性の課題
スマホ新法では、プラットフォーマーがユーザーに対して自社による決済手段を事実上強制する状態は競争を阻害するおそれがあるとして、指定事業者に対して「別の課金システム」も選択肢として提供することを求めている。
グーグルはGoogle Playストア上で、開発者がアプリを収益化する方法の柔軟性を拡大している。その一環となる施策が、2022年から日本のゲーム以外のアプリを提供するデベロッパー向けに提供してきた「ユーザー選択型決済プログラム」だ。デジタルコンテンツのアプリ内購入において、開発者はGoogle Playの課金システムと並列して、別の課金システムを提供することができる。
2025年12月18日以降はこのプログラムを順次、日本のゲームアプリの開発者にも開放する。
ここで争点となるのがアプリの開発者がグーグルに支払う手数料のことだ。グーグルは「新法の文言、および公正取引委員会が示すガイドラインにも、Google Playストアが提供するプラットフォームとしての価値に対価を求める権利があることが明確に示されているため、引き続き手数料を請求する」との立場を崩していない。
デイ氏によると、新しいプログラムへの登録に対して開発者から手数料は請求しないという。グーグルの決済処理サービスを利用しないことを反映し、手数料水準は引き下げられるものの、Google Playストアが提供する価値に対する請求は継続される。
仮に外部決済を利用しても、開発者にかかる「グーグルへの手数料」と「外部決済業者の手数料」によるトータルの負担が、従来のGoogle Playストアの課金手数料と大差なければ、開発者にとってシステムを変更するメリットは薄い。さらにユーザーが外部の決済手段に遷移する際、セキュリティ警告のような「スケアスクリーン」と呼ばれる威圧的なアラート画面が間に挟まれることになれば、ユーザーの購買意欲を削ぐ結果を招くことになる。
形式上は「別の課金システム」を用意していても、実際の使い勝手が悪く、コスト面でも優位性がなければスマホ新法が掲げる競争促進には結びつかない。中期的に見れば開発者にとって経済的合理性があり、かつユーザーが違和感なく利用できる購買体験を実現できるかどうかが、本法の実効性、あるいは成否を左右する重要なポイントになりそうだ。


