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2025.12.24 07:15

道路をコンピューターにする東北大学の新技術、渋滞予測を変えるか

Getty Images

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道路を行き交う自動車の流れを、CPUやメモリーのようなコンピューターの計算資源、つまり「部品」として取り込み、道路をまるごとコンピューターにして渋滞予測をさせるという、新しい機械学習手法が提案された。

画期的な省エネ機械学習リザーバコンピューティング

現在広く使われている人工知能は、深層学習という方法で「教育」をしている。頭がまっさらな子どもに、いろいろなことを一から教えるやり方だ。大量のデータを与え、その意味や関係を学習させることで、人間の脳の神経回路を模したニューラルネットワークがどんどん大きく複雑になっていく。そうして、あらゆる問題に対応できるめちゃくちゃ頭のいい子に育つ。そのかわり、膨大な計算を必要とするためコンピューターは高性能で大きなものになり、電力消費量も増える。

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これに対して、ごくシンプルなシステムで機械学習が行える「リザーバコンピューティング」という手法がある。こちらは、いわば地頭のいい子が、与えられたデータ(入力)から即座にそのパターンを判断して伝えると、人工知能はそれを学習して、ごく簡単な数学で将来予測などを行うというものだ。

こちらは、ニューラルネットワークは成長せず、ほどほどの規模に固定されている。それがリザーバ(貯水槽の意味)だ。入力を、この中に記憶されているパターンと照合して、近いものをポンと示してくれる。深層学習なら複雑な計算でパターン解析を行うところを、「なんか、これっぽい」と即答してくれるのだ。そのため、ごく簡単なシステムで済んでしまう。

インフラをリザーバに使いさらに省エネ構造に

さらにそのリザーバは、現実の「もの」に置き換えることも可能だ。そのひとつが、東北大学材料科学高等研究所の安東弘泰教授らによる研究グループが提案した、道路をリザーバとして使い、自動車の動きを入力とする「環境物理リザーバコンピューティング」または「道路交通リザーバコンピューティング」だ。

研究グループが実際に自律走行する自動車模型とジオラマを使って実験したところ、交通量がある程度多くなったときに、渋滞予測で高い精度を示した。これにより一定の計算性能が認められ、その考えの有効性が実証された。

道路のほか、エネルギーネットワーク、物流ネットワークなど、時系列で動きのあるインフラをリザーバに利用すれば、「現実世界そのものが計算を担う省エネルギー型AIシステム」が実現する可能性がある。研究グループはこれを、現実から入力を収穫する「収穫リザーバコンピューティング」とも呼んでいる。

それらのインフラにすでに備わっているセンサーなどを活用すれば、特別な装置やシステムを導入しなくても、将来予測が簡易に行えるようになり、「今後のスマートモビリティ・交通管制・エネルギーマネジメントなどへの応用」が期待できるということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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