2025年、「攻めの予防医療」というキーワードが国の重要政策として浮上した。今、地域医療の役割に大きな転換点が訪れている。
歯科DXによって人材不足の解消に挑み、「攻めの予防医療」を力強く推進する企業が岡山市に存在する。
歯周病の進行によって歯を失えば、食べる楽しみの減退につながるのは必然である。それだけではなく、歯周病は糖尿病や心筋梗塞、認知症といった疾患の要因にもなりうる。すなわち、生きる幸せの減退にもつながっていく。また、歯周病は日本人(15歳以上)の47.9%が罹患しているというデータがあり、老年層に特有の悩みではない。口腔の不健康が労働生産性の低下を招き、医療費の高騰を呼び、日本の国力減退にまで関与しているとの指摘も否定できない。
しかしながら、歯科業界は、①歯科衛生士がひとりもいない医院の割合が39.2%へと拡大、②歯科医師10万人のなかで歯周病専門医は1.2%しかいない、③3年後に80歳超の高齢者が約1,436万人に増加する一方、居宅訪問診療のニーズは19%しか満たしていないなど、地域医療が崩壊する寸前の危機的状況にある。これまでの「治療主体・外来主体」では国民のニーズを満たすことができず、深刻な局面に差しかかっているのだ。
時代のニーズにマッチした画期的な歯科DXソリューションを展開
上記の課題と向き合っているのが、岡山市の東和ハイシステムだ。創業者であり、現在は代表取締役を務めている石井滋久(以下、石井)が語る。
「東北大学の研究では『糖尿病患者が年1回歯周病治療で歯科を受診すれば、人工透析に移行するリスクが32%低減、さらに年2回以上受診すれば44%低減される』※という研究結果が発表されています。そこで、小児から来院が難しいご高齢の患者さままで一生のかかりつけ医として『治療から予防・外来から訪問』へと歯科医院の経営を革新することこそ、健康寿命の延伸・医療費の抑制・国民のQOL向上という目標の必達に向けて極めて重要であると考えています」
東和ハイシステムは、岡山市でレジ販売会社として1978年に創業した。86年に歯科医院用のレセプトシステムを手がけたのが、現在のビジネスの起点だ。DXという言葉が存在していなかった時代から日本の歯科医療の現場にDXによる改革を提案し続けてきた。2020年に東証の旧ジャスダック市場に上場し、23年には歯科業界ではじめてAIによる音声認識対応電子カルテ統合システムとして「Hi Dental Spirit AI-Voice」をリリース。その最新版が「AI・音声 Hiクラテス」である。
「全国の歯科医療現場における衛生士不足、歯科医師の歯周病治療・予防への経営革新、患者さまの予防への意識改革こそが、日本の明るい未来の起点になる。東和ハイシステムは、そうしたビジョンを見据えて『AI・音声電子カルテ統合システム』『AI・音声歯周病精密検査』『AI・音声サブカルテ』という3つのAI・音声シリーズを総称した『AI・音声Hiクラテス』を起点に、『治療から予防・外来から訪問』を二大テーマに掲げ、時代のニーズにマッチした歯科DXソリューションを展開しています」
東和ハイシステムが実現した「AIと音声入力を活用した歯周病精密検査」から日本の明るい未来が始まると言っても過言ではない。
「先行導入医院によるデータを解析すると、①歯周病精密検査を100%1人で完結、②精密検査時間を10分短縮、③メンテナンス率を最大12%アップ、④重度歯周病精密検査だと2人で30分を要していた時間が1人で20分、すなわち生産性3倍など、驚愕の結果が確認されています」
「AI・音声 Hiクラテス」を使用する歯科医師は、手袋を外さず音声でカルテを作成することが可能で、衛生士は、歯周病精密検査と記録が1人で完結できる。さらに、歯周病精密検査結果から1歯ずつ病名を判定支援する「Perio Judge」や、歯周病精密検査結果と患者の補足情報(たばこの本数・ヘモグロビンA1C数値・骨吸収率など)から歯周病の進行予測・診断を支援する画期的なソフト「Perio Judge II」といった新機能を次々と開発し、大きな反響を呼んでいるという。
攻めの予防歯科時代に適した患者のためのシステムとなっている。
「『AI・音声 Hiクラテス』に含まれているサブカルテも歯科医療現場の生産性アップに貢献します。歯科医療の現場で使われるサブカルテとは、歯科医や歯科衛生士が患者さまとの会話などを通じて気づいたことを記しておき、その後の治療や検診に役立てるものです。ところが、ほとんどの歯科医院では、手書きの補完用紙であるため、「読みづらい」「紛失する」「保管場所がない」「準備に時間がかかる」といった多くの問題がありました。しかし、音声だけでサブカルテの操作や入力が手元のタブレットに行えるようになった今、院内や訪問診療先での情報共有が格段に容易になっています」
日本が予防歯科大国へと歩む道を国民や歯科業界と共に駆けていく
「初の女性総理大臣が誕生し、医療費4兆円削減を掲げる日本維新の会と連立した内閣において、これまでの日本経済や社会保障のあり方、仕組みが大きく変わると期待されています。高市総理が所信表明で『攻めの予防医療』というキーワードを語ったことで、特に歯科業界においては『歯周病が糖尿病・腎臓疾患・認知症・心疾患といった全身疾患の大きな要因となる可能性があること』『歯周病の治療と予防こそが、年々増え続ける国の医療費の抑制、健康寿命の延伸、国民のQOL向上のために不可欠であること』が、より強く注目されていくでしょう。そこで、『治療から予防・外来から訪問』の実現、患者さま一人ひとりの健康と長生きの実現に向けて、歯科業界で活躍する衛生士をひとりでも多く育成するために、9月に『石井滋久記念財団』を設立しました。26年度から地元である岡山県内の歯科衛生士養成学校に在籍する学生に対し、奨学金支給事業を開始します。そして、この輪を全国の歯科衛生士養成学校へと広げていきたいと考えています」
26年1月1日、東和ハイシステムは「Hiクラテス」に社名を変更。「AI・音声電子カルテ統合システム」「AI・音声歯周病精密検査」「AI・音声サブカルテ」という3つのAI・音声シリーズの総称である「Hiクラテス」と商号を統一することで、ブランド力と企業価値をさらに高めていくのが狙いだ。
この「Hiクラテス」という名称は、古代ギリシャの医師で西洋医学のルーツとされるヒポクラテスにちなんでいる。
「ヒポクラテスは『人生は短く、医術は長い』という言葉を残しています。私は25年の11月で80歳になりましたが、今回の社名変更によって、会社はようやく第3フェーズに突入したと考えています。これから先が、まだまだ長いのです。これまで培ってきたものすべてを一新し、ここから日本が予防歯科大国へと歩む道を国民や歯科業界と共に駆け抜け、さらに20年、30年、50年と社会に貢献し続ける会社へと成長して参ります」
※Periodontal Care Is Associated With a Lower Risk of Dialysis Initiation in Middle-Aged Patients With Type2 Diabetes Mellitus: A 6-Year Follow-Up Cohort Study Based on a Nationwide Healthcare Database



