福武:内燃機関に関していえば、村上隆さんはアーティストとして超一流であり、自らギャラリーも経営し、LVMHとコラボするなどビジネスでも成功しています。でもそれは例外中の例外。大事なのは組み合わせの妙で、例えば、アート業界で花開かずとも、ビジネスとの共創で成功する可能性もあります。
永田:おっしゃる通りですね。アカデミアの世界でも画期的な論文やノーベル賞の技術がビジネスになるとは限らず、枯れた技術のほうが使われやすかったりします。最高の研究者が社長になるパターンもまれで、兆円クラスのディープテックスタートアップの多くは、サイエンスに親和性の高いCEOを外部から起用しています。
昨今、確実にCXO人材が増えているのは、そこにビジネスチャンスがあると見られているから。こうしてインセンティブの違うプロフェッショナルが混ざってくることが重要。一方で、アートの世界にビジネス目線で飛び込むことにはまだ忌避感があるようにも思います。
福武:アート界にも独自の価値観やコンテクストがありますが、あまり気にせず入っていってよいのかなと。例えばチームラボは、買えない規模の大型作品を見せるために入場料をとる新しいビジネスモデルを生み出しました。通常ギャラリーは作品を見てもらうのにお金をとったりしないのでこれは革新的。そして現在は世界大手のペースギャラリーに所属しています。何事も、最初は抵抗があるけれど、次第に普通になっていく。
他方、企業とアートのかかわり方についていえば、大企業が社長直下にデザイナーを置くのが浸透したように、アーティストがエッジの効いた価値観をもたらす存在として入る余地はあるのかなと。「いつまでにどんな成果を」と定量的は測れない、別の解のための中長期的な種まきとしてアートを注入するのは良い気がします。
永田:僕は10年前にファンドを立ち上げたとき、初期メンバーに哲学者を入れました。「この技術が社会実装されたら人間生活がどう変わるか」など、根源的な問いを立てていく機能として必要だと感じたからです。アーティストがもつ独自機能も、その必要性が十分説明できる存在になりうると思います。


