ベネッセホールディングス取締役会長兼福武財団理事長としてアート活動に取り組む福武英明と、ディープテックなど未踏領域への投資を推進するUntroD社長の永田暁彦。ART & BUSINESS AWARD 2025で有識者を務めたふたりが、黎明期特有の面白さ、共創の未来を語る。
──有識者としてアワード立ち上げから審査までかかわられた感想は?
福武英明(以下、福武):率直に面白かったです。大きな理由は、普段からアートやビジネス、その共創に触れている有識者の面々でも知らない取り組みがたくさんあったこと。こんな組み合わせもあるのかと、審査する立場として参加していてとても勉強になりました。料理番組が新しい味付けや混ぜ方を紹介することでレパートリーが増えていくみたいな。
ビジネスもアートも多様なレイヤーがあり、その組み合わせは無数にある。今この領域は黎明期にあり、その可能性を提示するアワードだと感じました。
永田暁彦(以下、永田):同じく学びが多かったです。これまで評価の対象になりにくかったものを評価するにあたって出てきた、有識者個々人の視点も参考になりました。集合知がさらに集まり、評価する側の整理や言語化も発展していくといいなと。
福武:エントリーシートを読んでいて思ったのが、前例のない取り組みを暗中模索でやっているところも多いのだろうということ。ベネッセもそうですが、大企業でさえ全社一丸となって取り組んでいるところは少なく、社内で反対されたり、リスクをとってやっているはず。そんななかでこのアワードが背中を押す効用は大きいと思います。
──アートとビジネスの共創についての肌感は?
福武:まずアワードの「ART & BUSINESS」という語順に配慮があっていいなと(笑)。というのも、ビジネス側から「アートを取り入れて……」という話はよく聞くようになりましたが、アート側からそうした動きはほとんどない。ビジネス側は組織、アートは個人であることが多く、やはりパワーバランス的にフェアじゃない。アート側に寄り添うことが共創のカギになる気がします。
永田:僕は、自ら内燃機関をもつ存在として、サイエンティスト、アーティスト、起業家に着目しています。日本各地のサイエンティストを訪ね、一緒にビジネスをしましょうと提案するのですが、例えば「これで10億円の資産を築けるかもしれないですよ」と話してもそれがモチベーションになる人はあまりいない。「資本主義のルールにのることで、あなたの研究を継続・拡大させられる」というと共感を得て、アカデミアの殻から外に出ます。
アーティストも同じ。彼らが表現したいというパワーをビジネスに変えるのは、周辺なんだと思います。世の中に相似形は存在するので、サイエンス界が10年かけて日本のベンチャー投資の50%を得るようになったところから学べることもあるかと。



