国内

2025.12.18 17:45

日本にグロース・エクイティ投資の黄金期が来る――SmartHRに株主参画の世界投資大手が積極姿勢

アレックス・クリシス General Atlanticマネージング・ディレクター グローバル新規案件ソーシング責任者

アレックス・クリシス General Atlanticマネージング・ディレクター グローバル新規案件ソーシング責任者

今年11月、国内スタートアップ産業に衝撃的なニュースが飛び交った。クラウド人事労務ソフトを展開するSmartHRに、グローバル大手投資会社のGeneral Atlanticが146億円を投資したのだ。今回の投資は、Coral Capitalが保有する一部株式の譲渡によるもので、投資家間で売買するセカンダリー取引としては、日本で過去最大規模となる。

General Atlanticは、米国ニューヨークに本拠を置く投資会社で、運用資産残高(AUM)は約1180億ドル。グロース・エクイティ投資を得意としており、Airbnb、Bytedance、Duolingoなどの成長を支えてきた実績をもつ。国内スタートアップへのグロース・エクイティ投資は今回が初めてだ。

同社のマネージング・ディレクターでグローバル新規案件のソーシング責任者を務めるアレックス・クリシスに、投資の経緯と今後の方針について聞いた。


――今回、国内スタートアップへのグロース・エクイティ投資に参入した背景は

アレックス・クリシス(以下、クリシス):2年半ほど前から日本市場でのグロース・エクイティ投資について検討を始めた。背景には3つ理由がある。ひとつ目は、ベンチャーキャピタルとバイアウトファンドの中間となるような存在が日本にはないことだ。米国と違い、レイターステージの資金供給量が乏しく、グロース・エクイティのマーケットそのものがまだない状態だ。

ふたつ目は、その結果として、多くのスタートアップ企業が、あまりに未熟なままIPOしてしまっていること。株式公開をした後に、時価総額が伸びなくなってしまったり、起業家自身が会社を大企業に成長させていけるという自信を持てないでいたりする。レイターステージに対してしっかりと資金を供給することで、ここに変化をもたらしたいというのが我々の考えだ。

3つ目は、政府のサポートが手厚くなっているうえに、起業家の意識も変わり始めていることだ。我々が日本市場に関心を持ち始めた当時は、まだ政府による支援は十分ではなかったが、今では起業家・投資家の双方に対して大変手厚いサポートが用意されており、我々自身も日本政府にとても歓迎されていると感じている。

私は四半期に1度のペースで来日しており、100社以上のスタートアップ・250人以上の起業家と面談を行ってきた。日本のエコシステムのなかで面白い事業をいくつか見つけて検討した結果、ようやくディールに漕ぎ着けることができた。それが今回のSmartHRへのグロース・エクイティ投資だ。

――100社以上と面談を重ねるなかで、日本のスタートアップにどのような可能性を感じているのか。また、SmartHRを投資先に選んだ決め手は何か。

クリシス:この2年半で、大企業をつくっていくのだという強い野心をもつ起業家の数がかなり増えたと感じている。日本のスタートアップがつくり出しているテクノロジーの質はワールドクラスであり、グローバルのほかの地域と比べても引けを取らないと思っている。若い人たちがどんどん起業家になっていく勢いもあり、エコシステムの進化が期待される。我々としては特にHRテック、ロボティクス・AI、特定業界向けソフトウェアに関心を持っている。

そのような中で、SmartHRに投資した理由は4つだ。まず、HRテックのなかでもカテゴリリーダーであり、売り上げの規模・成長率ともに優れている。次に、HRテックのなかでも「中枢神経」に位置するベストなプロダクトをもっており、周辺の製品群を積み上げていくことができること。特に日本は、オンプレミス型からクラウド型への移行という観点で、まだ大きな成長の余地がある。

3つ目は、現在の立ち位置を生かして、いろんなM&Aを実施できること。そして最後が、SmartHRの経営陣を信頼しており、我々自身も知見を提供しながら成長をサポートできると確信したからだ。

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文=眞鍋 武

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