経済・社会

2025.12.25 08:30

祝ノーベル経済学賞 独占!モキイア教授 「日本には大改革が必要」 AIが変える未来

ジョエル・モキイア|経済史学者、ノースウェスタン大学教授 (PORTRAIT IMAGE : SHANE COLLINS / NORTHWESTERN UNIVERSITY)

──持続的成長には、上述の原理的な「命題的知識」と、技術的な「規範的知識」の相互作用が必要なのですよね。

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「有用な知識」には2種類ある。まず、命題的知識は「what」という問いであり、自然現象の法則を理解することだ。一方、規範的知識は「how」という問いであり、実現方法を示すレシピだ。問題は、両者がどのように影響し合うかだ。

例えば、鋼の製造は「規範的知識」であり、鋼に関する化学は「命題的知識」だ。命題的知識は、より良い鋼の製造につながる。だが、重要なのは、規範的知識から命題的知識への「フィードバック」効果も生じるという点だ。科学が技術を生むだけでなく、技術も科学の進歩につながる。

例えば、ガリレオは(1610年に)天体望遠鏡という当時の新技術を使い、4つの衛星が木星の周りを回っていることを発見。そして、(地動説の正しさを裏づけ)科学を発展させた。科学的革命の大半は、より優れた道具や顕微鏡、コンピューターなどの発明を契機に生まれる。

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つまり、科学が技術を向上させ、技術が科学を進歩させるという好循環だ。技術が人間を永遠なる進歩へと導き、持続的成長が実現する。これは実に重要な点だ。

──人工知能(AI)が大きな注目を集めています。AIに対する教授の見解は?

『知識経済の形成』の原著が出た2002年当時、IT革命の影響はまだ顕在化していなかった。だが、その後、コンピューターは人々の生活を「革命的に」変えた。

AIの未来を正確に読むには時期尚早だが、科学の発展を加速させるだろう。科学分野へのAI汎用は膨大なものになる。技術・科学間のフィードバックだ。AIというアルゴリズムの集合体は「技術」であり、まさに規範的知識だ。

AIが人々の生活をより良くする可能性は無限だ。『知識経済の形成』(第3章)では、IT革命は生産性などに関し、まだ、私たちの「希望と期待に十分応えていない」と書いたが、あれから23年。AIの進歩は私の希望と期待に十分応えている。

私はAIに関し、かなり楽観的だ。人間が不要になるのではないか? AIが世界を支配し、人間は機械の奴隷になってしまうのではないか? そうした懸念は多いが、どれもナンセンスだ。

AIは、ごく狭い知能の定義に基づき、情報を処理するだけだ。一方、人間には、直感や感情など、情報処理以外の知性がある。AIは人間の有能な召し使いになるが、その逆は決して起こらない。

──AIを持続的経済成長の起爆剤にするには、どうすればいいですか。

「パーソナライゼーション」、つまり、カスタマイズだ。現在、多くのサービスは「画一的」だ。例えば、教育もそうだ。教師は、優秀な生徒にも、勉強が苦手な生徒にも、画一的な一斉授業で対応する。

一方、AIは、生徒に関する膨大な情報量を処理し、教育のパーソナライゼーションを可能にする。個人のニーズに合わせた授業で、生徒の能力を最大限に引き出す。

医療も同じだ。通常、医師は患者の遺伝子配列など、十分な知識をもっていないため、薬を処方しても、効かないことがある。だが、AIを使えば、患者のゲノムなどに基づき、的確な治療法を特定できる。

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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ジョエル・キンメル

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