年末も近づくこの季節にはよく「感謝」という言葉が飛び交うが、感謝が容易にできるのは心に余裕があるときだろう。もしあなたが今、神経をすり減らすような仕事や、細かく口出しする上司、エネルギーを吸い取るような同僚に日々悩まされていたら……?
そんな状態では感謝など、耳障りのいい挨拶にしか聞こえないかもしれない。しかし実は、感謝するという行為にはあなた自身のパフォーマンスを高める力がある。さまざまな研究により、職場で定期的に感謝の気持ちを表す人はネガティブな感情が減り、燃え尽き症候群のリスクも軽減することがわかっている。
感謝を実践することで、効果が得られるのは確かだ。メンタルヘルス・ファーストエイドUSA(Mental Health First Aid USA)の研究によると、感謝することで幸福度が10%上がり、抑うつ症状も35%緩和するという。
しかし、「言うは易く行うは難し」だ。物事がうまくいっているときは、感謝の気持ちを持つのはたやすい。一方で、不健全な職場環境に身を置いているときは、感謝はすることははるかに難しくなる。とはいえ逆境のなかで行う感謝は、決して自分をあざむくことではない。感謝することは、今体験していることの意味を捉え直し、成長の糧を見出すことにつながる。
ここからは、「現実逃避的なポジティブ思考」に陥ることなく、健全な形で感謝を実践する方法を紹介していこう。
今の苛立ちを「情報」として捉える
すべての摩擦が問題であるとは限らない。ときには、イラつかせる同僚や融通の利かない上司の存在が、あなた自身の許容範囲やワーキングスタイルを知るヒントになることもある。だからそのイライラした気持ちを「診断ツール」として使ってみよう。この状況は、あなたが力を発揮するために何が必要だと教えてくれているのだろう? こうした状況での感謝とは、すべてが順調だと自分に思い込ませることではない。感謝は「うまくいっていないこと」が明確にするための診断ツールだ。
「感謝の心理学」研究におけるパイオニア、ロバート・エモンズとマイケル・マッカラフの研究によれば、困難な状況から何を学んだかを日記に記すといった些細な感謝の実践でも、時間の経過とともに楽観性と満足度が大きく高まることがわかっている。



