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2026.01.10 10:15

山中伸弥さんがノーベル賞受賞を手放しには喜べなかったワケ

『夢中が未来をつくる』(サンマーク出版)

「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。中国に伝わる昔話が元になっていますが、それはこんなお話です。

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あるところに1人の老人が住んでいました。あるとき、この老人の飼っていた立派な馬が逃げ出してしまいました。みんなが老人をなぐさめますが、老人は「このことが幸せにならないともかぎらないよ」と言います。しばらくすると逃げ出した馬が、たくさんの立派な馬を引き連れて帰ってきました。

みんなが老人にお祝いを言いにいくと、老人は「このことが災いにならないともかぎらないよ」と言います。しばらくすると、老人の息子が馬から落ちて足の骨を折ってしまいました。

みんながなぐさめると、「このことが幸せにならないともかぎらないよ」と老人。しばらくすると、隣の国と戦争が始まり、若い人たちはみな兵隊にとられて、その多くが死んでしまいました。けれども老人の息子は足をケガしていたおかげで、戦争に行かずにすみました。

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よいことがあっても、それは悪いことにつながっているかもしれない。また、一見悪いことに思えても、それがよいことの始まりかもしれない、という教訓です。

「人間万事塞翁が馬」という言葉は高校生のころから知っていましたが、当時はさほど心に響きませんでした。しかし、社会人になって経験を重ねるにつれ、まさにそのとおりだと思うようになってきたのです。

悪いこともいいことにつながっているかもしれない

生きているといろんな出来事があります。そのときは失敗したと思って落ちこんでも、それが次の幸せなことにつながったり、のちのちとても役に立つ経験や知識を与えてくれたりすることがあるものです。

その反対に、いいことがあったときも、それはもしかしたら大変なことにつながっているのかもしれません。

たとえばノーベル賞をいただいたときも、みなさんからお祝いの言葉をいただけて「よかったね」と言われるのですが、いいことばかりではありませんでした。

うれしい反面、その技術を活かして多くの人たちの病気を治し、健康にしていくために活用していかなければいけないという、重たい責任が肩にのしかかってきたからです。

いいことがあっても手放しに喜ぶだけでなく、それが悪いことにつながるかもしれないと油断せず、しっかりと地に足をつけて歩んでいく。一方、悪いと思えることがあっても、それはいいことにつながっているかもしれないから、落ちこんだり自暴自棄になったりすることはないのです。

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文=山中伸弥/京都大学iPS細胞研究所名誉所長

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