2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さん。iPS細胞という画期的な発見への道のりには、何度も「予想外」がありました。
大学院での最初の実験で、指導教官の仮説とはまったく違う結果が出たとき、山中さんは心から興奮しました。アメリカでの研究でも、コレステロールを下げるはずの遺伝子が、がんを作る遺伝子だったという予想外の結果に直面します。
予想どおりにならないからこそ、おもしろい。その姿勢が、やがてES細胞、そしてiPS細胞の研究へとつながっていきます。山中伸弥さんの著書『夢中が未来をつくる』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。
予想どおりにならないからおもしろい
研究者としての初めての実験から、私は3つのことを学びました。
1つは、科学の世界は驚きに満ちているということ。そして、予想どおりにならないことにこそ、科学のおもしろさがあるということ。
2つめは、予想どおりにならないからこそ、新しい薬を開発するときにはじゅうぶんに実験をして、安全かどうか、そして本当に効くかどうかを確かめるまでは、患者さんに投与してはいけないということ。
3つめは、先生の言うことをそのまま信じてはいけないということ。
研究というのは仮説を立てて、それを実証するためにおこなうのですが、仮説を立てる研究者も人間ですから、いつも正しいわけではなく、まちがえることもあります。
だから、実験をすると仮説どおりにいかないことのほうが多いのです。10回の実験で、予想どおりの結果が1回得られたらいいほうです。でも、がっかりしてあきらめたら、そこで終わってしまいます。
仮説どおりにいかなかったのは、自分の知識や経験がまだ足りなかったのだということ。それを結果が教えてくれているのです。自然はもっとすごい、ということを伝えてくれているわけです。
予想どおりの結果にならなかったときも、落ちこんだりがっかりしたりすることなく、また新しい世界が広がったのだとおもしろがれるかどうかで、研究者に向いているかどうかがわかるのではないかと思います。
それは研究にかぎらず、どんなときにも大切な姿勢ではないでしょうか。
自分の思ったとおりにならなかったとき、また新しいことを学んだと思えれば、これから先、自分が進んでいく道に役立てられるでしょう。



