ビジネス

2025.12.18 15:15

対人恐怖症を乗り越え、孤独を力に変えた起業家の挑戦

画面の向こうに「誰かがいる」、だから頑張れる

ローンチ後、想定外の広がりを見せたのは、フリーランスや個人開発者、学生コミュニティといった「ひとりでつくる」層だった。

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京都在住のフリーランス広報・オギユカさんもその一人だ。かつて東京のIT企業でフルリモート勤務をしていたが、半年で退職した。理由は「孤独」だったという。SlackやZoomは効率的でも、画面越しには人の気配がなかった。そんな彼女が再びリモートワークに希望を見出したのが、Teracyだった。夜中の作業中に「寝るぽよ」とつぶやくと「おやすみぽよ」と返ってきた──その瞬間、リモートでも他愛ない会話のぬくもりを感じたという。

「Teracyは、働く場所の自由だけでなく、世界とゆるやかにつながる喜びをくれた。もうあの孤独はここにはない」とオギユカさんは語る。孤独を力に変えるリモートワークの新しいかたちが、いま生まれている。

挑戦者が増えるほど、孤独も増える

現在、「個人による挑戦」の爆発的な増加期に入っている。

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2024年には世界で78%の企業が何らかのAI技術を活用しており、「AIの民主化市場」は2024-29年で年平均成長率約30%で拡大すると見込まれている。これは、プログラミングやデザインの専門知識がなくても、アイデアさえあればプロダクトを生み出せる時代が到来したことを意味する。

ノーコードツール、AI支援開発環境、自動デザイン生成、かつては大企業やベンチャーキャピタルの支援が必要だった「ものづくり」が、個人の手に委ねられつつあるのだ。

だが、森井氏はこの潮流の裏側を見据えている。

「挑戦のハードルが下がるということは、同時に孤独の総量も増えるということです。会社に所属していれば、隣に同僚がいる。上司に相談できる。でも個人で挑戦する人が増えれば、その全員が『誰にも理解されない夜』を経験することになります。

対人恐怖症は今もあります。完全に治ったわけじゃない。でも、Teracyを作ることで、自分自身が救われた部分がある。深夜3時にTeracyのことを一人で考えていても、画面の向こうで同じように誰かが作業している。その気配が、僕を支えてくれたんです」(森井)

次ページ > 一人なら早く行ける。でも、仲間となら遠くまで行ける。

文=西村真里子

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