経営・戦略

2025.12.22 11:00

競合に勝つより「つながれ」──なぜ今、優れた企業ほどエコシステム思考を重視するのか

Shutterstock.com

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ビジネスにおける戦略は、ずっと以前から競争として捉えられてきた。企業はライバルを研究し、その弱点を探し、自分たちの勝利を図る。戦略で用いられる言葉も、おのずと競争的なものとなった(市場シェア、参入障壁、優位性といったものだ)。リーダーは自分たちの置かれた環境を、戦場とみなすよう訓練されてきた。

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しかし、世界は変わった。今ではほとんどの組織が、ライバルを打ち負かすというよりは、エコシステムの中で活動している。つまりパートナーやサプライヤー、規制当局、さらには競合他社さえ含む「他と連携すること」が、成功のカギを握るようなエコシステムだ。

サプライチェーンの脆弱性、プラットフォーム依存、気候変動の圧力、テクノロジーの創造的破壊といった問題は、個別の企業が単独で解決するには大きすぎるからだ。

競争志向のマインドセットは、往々にして視野を狭める。リーダーは脅威にばかり気を取られ、連携から生まれるチャンスが目に入らない。さらにこうしたマインドは、不必要な摩擦も生む。しかし現在、多くの業界において、最も意味のある成果は協働から生まれている──規格の共有、データの統合、インフラの共同構築といった動きは、単純な勝ち負けの枠組みには収まらない。

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多くのリーダーはこうした変化を直感的に感じつつも、つい競争的な言葉を使っている。戦略について考える際に、そうするように教えられてきたからだ。しかし、現実はもっとシンプルだ。今日の戦略は、ライバルを打ち負かすというよりは、当事者全員をより強くする関係性を構築することにあるのだ。

協調が、個別競争よりも大きな価値を生み出す理由

協調は、戦略的成果を生み出すエンジンでありながら、見過ごされている。組織同士が共通の目標に向かって連携するとき、それぞれがパートナーの可能性を拡大する作用が働く。その結果、情報の流れは速くなり、イノベーションはより遠くまで広がり、リスクはより均等に分散される。

こうした効果を説明するのに役立つのがネットワーク理論だ。ネットワークを構成する一つひとつのノード(点)には、限られた力しかない。しかし、個々のノードが他の多くのノードとつながり、信頼と相互利益によって互いに結びつけば、自らの力が及ぶ範囲をはるかに超えた成果に影響を与えることができる。だからこそ、個々の企業がいかに強力であったとしても、単独で活動するより、エコシステムを構築する方が優れた成果を上げるのだ。

こうした力学はテクノロジー、ヘルスケア、物流、エネルギーの分野に見ることができる。ブレイクスルーが単独で生まれることはまずない。それらは協調による実験、統合されたリソース、そして長期的なパートナーシップから生まれる。狭いライバル関係の中で解決不能なほど複雑な課題がある場合は、たとえ競合同士でも手を組んで協力することになるのだ。

協調は、レジリエンスも強化する。システムの一部が機能不全に陥っても、他の部分がそれを補完する。対照的に、競争は効率を高めるが、それはしばしば堅牢性を犠牲にする。関係性という足場を築かずに優位性を追い求めるリーダーは、環境が変化した瞬間に、自らの戦略が崩壊するのを目にすることになる。

競争から協調への転換は、ライバル関係を消滅させるわけではなく、関係性の枠組みを再構築する。リーダーはいま、2つの問いを問うべきだ。つまり、「我々が競争する必要があるのはどこか」という問いと、「競争を価値あるものにするために、我々はどこで連携すべきか」だ。こうした問いこそが、現代における戦略的思考の基盤となる。

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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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